ネットイヤーグループ株式会社

2014年4月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

会社のビジョンである「働き方の多様性」と
「コミュニケーションの活性化」を実現したオフィス

インターネット技術を活用した企業の事業成長支援で業績を伸ばしているネットイヤーグループ株式会社。今回の移転は前オフィスの契約期間満了に基づいたものだが、移転プロジェクトを進めるにあたり新たな取組みにも挑戦した。それは今後の増員計画に向けて行った施策であるという。その取組みについて移転プロジェクトの担当者にお話を伺った。

プロジェクト担当

足立 敢氏

ネットイヤーグループ株式会社
人事総務部
総務チーム
チームリーダー

足立 敢氏

大槻 祥江氏

ネットイヤーグループ株式会社
グループ戦略室
広報
マーケティングマネージャー

大槻 祥江氏

ネットイヤーグループ

はやわかりメモ

  1. デジタルマーケティングを通じて企業の事業成長を支援するために誕生
  2. 移転を機にフリーアドレス制度を導入。自由度のあるオフィスが誕生した
  3. 赤坂から銀座へ。10ヵ月かけてようやく移転先ビルが決定
  4. コミュニケーション活性化のための仕掛けをふんだんに採用した新オフィス
  5. 社内でPDCAサイクルを繰り返し常に「変わる。変える。」を継続していく

デジタルマーケティングを通じて企業の事業成長を支援するために誕生

1999年7月7日、東京・港区に設立されたネットイヤーグループ株式会社(電通国際情報サービスの100%米国子会社Netyear Group, Inc. として分社化。その後MBOを実施、独立)。設立後、事業拡大や他社との業務提携を続けながら増員を繰り返してきた。そして設立当時から変わらずに二つのこだわりを大切にしている。
一つは、これまでの業務の枠組みにとらわれない新しい仕組みを提案すること、そしてもう一つが、成果が出るまでお客様の立場で取り組み続けることだ。

「企業の強いブランドを育てるために、ネットイヤーグループは、さまざまな業界業種の大手企業を中心に、デジタルマーケティング支援を行っています。具体的には、お客様のビジネスゴールを共有して、そのゴール達成に向けて、IT技術を活用し、徹底した顧客中心のユーザーエクスペリエンスデザインを基にした施策です。デジタルマーケティング戦略やオムニチャネル戦略の策定から始まり、PC・モバイルなどの企業サイトやECサイトの構築・運営、プロモーション、データ分析、ソーシャルメディアの活用、コンタクトセンターの最適化まで総合的に支援します」(大槻 祥江氏

一つの事案に、各種専門職が連携をとりながら提案・設計・構築・運用を行う。まず、目標値の設定から閲覧者の分析、問合せまでの動線を考えるインフォメーションアーキテクトという専門職による設計。それに合わせたデザイン構築。そして総合的に一連のサイクルをプロデューサーがマネジメントをする。そんな体制をプロジェクトごとにつくっている。

「例えば、同じ会社でも、部署が異なれば、目指すこともやり方も違います。そこで弊社では、部署ごとに要件を伺い、戦略を立案し、必要に応じて、部署間の連携をサポートし、その企業のデジタル戦略としての一貫性を保持しつつ、業務効率も向上させる。そんな部門間を横断して提案できる会社として弊社が選ばれているのでしょう。弊社に依頼すれば総合的に課題を解決してくれるだろうと。そんな安心感を持って中長期的にお付き合いしていただいている大手企業のお客様が多いですね」(大槻氏

グループ会社としても、CMSなどのWebシステムやデジタルコンテンツの設計・制作・運用などを専門に行うネットイヤークラフト、ソーシャルメディアを専門に扱うトライバルメディアハウス、クラウドベースのオフィス支援アプリrakumoを企画開発・販売する日本技芸を持つ。それにより多様なニーズに応えることを可能としている。

移転を機にフリーアドレス制度を導入 自由度のあるオフィスが誕生した

今回の移転は以前入居していたオフィスビルの契約期間満了による理由が大きい。したがって特に設備や立地に、大きな不満要因があってのものではなかったという。
ネットイヤーグループの場合、事業モデルが労働集約型の業務のため、業務の拡張に伴って人員を増やすことで対応してきた。そのため毎年約15%の割合で増員。そのほかにもプロジェクトによってはパートナー企業や派遣社員が加わっていた。

「実はオフィススペースのバッファが無くなりつつあるところでした。ちょうどスペースを捻出する方法を考えていたので、今回の移転はとてもいいタイミングだったといえるでしょうね」(足立氏

頻繁に業務提携なども行われるため、急な増員に対応できるスペースを常に用意しておかなければならない。そこで移転を機にフリーアドレス制度を導入。自由度のあるオフィスが誕生した。

「全社的なフリーアドレスを導入しました。弊社の場合、平日は外出している社員が多いため、オフィススペースの効率的な活用ができるようになると思います」(足立氏

「弊社には、多様な職種のメンバーがいます。フリーアドレス導入によって、さまざまな職種の人とのコミュニケーションが生まれきています。ナレッジの集積という意味では専門職ごとの運営が効果的だと思うのですが、社風として、多様性からのイノベーションと自由を大切にしているので、新しい運営スタイルにチャレンジしているのだと思います」(大槻氏

赤坂から銀座へ。10ヵ月かけてようやく移転先ビルが決定

今後の増員計画を考慮して、旧オフィスの使用面積よりも200坪も広い面積で探すこととなった。とはいえ、面積が広くとれればそれでいいというわけではない。立地やビルグレードなど、移転後のインパクトや必須条件を踏まえて絞り込んでいく。その作業は何度も繰り返し行われた。
本来は、広い面積を確保できるビルが理想ではあったが、多層フロアで
のメリットやトータルコスト、立地などを判断材料にしてようやく移転先ビルが決定した。足立氏がビル探しを開始してから10ヵ月後のことである。

「前オフィスの契約期間については前もって分かっていましたので、2012年11月から探しはじめました。面積、コスト、ビルのイメージ、耐震性などのいくつかの条件をクリアしたビルを100棟くらい見てまわりました」(足立氏

「移転先のビルが決定し、正式に全社員に移転の告知を行いました。そのタイミングでオフィスに関するアンケートを実施。色々な視点で要望をいただきました」(大槻氏

「同時期に、移転プロジェクトに協力してもらえるメンバーを募集しました。10名ほど集まりましたね。その後、定期的にミーティングを行いながら移転後のレイアウトに関するアイデアについて、詰めていきました」(足立氏

コミュニケーション活性化のための仕掛けをふんだんに採用した新オフィス

「弊社のビジョンである『変わる。変える。Change myself. Change theworl d. 』。これは、会社の働き方、働く環境・オフィスについても同様です。この言葉は私どもの姿勢や働き方を表しています。今までの成功体験や固定概念を考えずに挑戦していこうと。今までうまくいっていたから今後も変える必要はない、という考え方は失敗も無いけれど大きな成功もない。失敗することは決して悪いことではない。常にトライ&エラーの気持ちを持とう。そんなネットイヤーグループの精神をオフィスづくりにも生かせればいいと思っていました」大槻氏

以下がネットイヤーグループのビジョンだ。

ネットイヤーグループ ビジョン

変わる。変える。

Change myself. Change the world.

成功体験ほど最悪のものはない。

成功のために考えられた理論も技術も市場も

すでに過去のものだからだ。

成功の一分一秒後に、市場は変化している。

技術も変化している。

留まっているのは成功したものだけだ。

すぐにでも成功を捨てよう。留まるな。

テクノロジーの進歩のスピードはかつての比ではない。

インターネットの世界で、

10年存続する企業がどれだけあるだろうか?

10年前の覇者は現在の敗者になりえる。

ここでは、かつての永続的企業の理論が通用しない。

どんな技術を持ってしたら永続的企業ができるのだろう?

もし、永続的企業を論じることができれば、

それは、変われるものだけだ。

伝記を読むな。成功体験を聞くな。ロールモデルを探すな。

市場に迎合するな。市場を作り出せ。

チャレンジしなければ失敗はない。

失敗しなければ学ぶこともない。失敗は進歩の比喩である。

戦略に失敗はない。実行してみなければ失敗はない。

徹底的にやりぬこう。

失敗?

科学の世界に失敗と呼ばれるものはない。

仮説を立て実験をして仮説と違った結果が得られたとすれば、

それらはすべて「データ」と呼ばれる。

データを集め、分析し、初めて最適解が見つかる。

失敗の仕方がわからなければ、簡単な方法がある。

誰もしなかったことをすることだ。

自分を信じる。そこから始めてみたらどうだろう。

変化を信じる人たちと仕事をしよう。

Change myself. Change the world.

それでは具体的にオフィスの特長について説明していこう。

まず2階が総合受付と会議室のフロアとなる。コーポレートカラーであるオレンジ色を基調としたデザインでまとまっており、フロア真ん中にはビリヤード台、壁にはダーツボードが配置されている。

「受付にビリヤードやダーツを置くことで、弊社にお越しいただいたお客様には、『ネットイヤーって、遊び心あるな。なんだか楽しそう。一緒に仕事をしてみたいな』と、少しでも明るい気持ちでお待ちいただける場になれば嬉しいですし、社内メンバーに対しては、コミュニケーションのための潤滑油になればと思っています」足立氏

2階総合受付フロア

 2階総合受付フロア

「これからは社内やグループ企業以外にも、パートナー企業やお客様との交流に繋げていければと思います」(大槻氏

会議室

プロジェクトメンバーからの意見を元にデザインされた会議室

受付フロア奥には、大小合わせて13室の会議室が配置されている。

「現在、会議室のドアにデザインされた部屋番号が書かれているのですが、これもプロジェクトメンバーからの意見を参考に採用したものです。しかし実施後に会議室のドアが開いている状態だと番号が見えにくいことに気づいて。まさに弊社のトライ&エラーの精神ですが、これを失敗と捉えるのではなく学習と考えて改善を検討します。時にそういった文化が心地よく感じるときがありますね」大槻氏

3階はラウンジが中心となったフロアとなる。全座席は50席、用途に応じて使えるように、一人席やファミレス風のミーティング席が設置されている。そしてこのフロアの真ん中にも、コミュニケーションの活性化を目的とした卓球台が置かれている。

「デザインを考えるにあたり、ラウンジはつくりたいと思っていました。グループ間でのコミュニケーションを活性化するには必要なツールになるだろうと。プロジェクトメンバーとの意見交換の中で卓球台のアイデアがあり、採用しました」(足立氏

ファミレス風ミーティング席

用途に応じてさまざまな座席が用意されている。写真は使用頻度が高いファミレス風ミーティング席

「3階の多目的のラウンジには、卓球台やマッサージチェア、自動販売機などを置いています。見ているとごく自然に交流が生まれているようですね。今まではグループ会社同士とはいえ、話す機会はあまりありませんでした。それが今では、卓球台の上に資料を広げて課題解決のために自然に関係者が集まっている。顔が見えるところで話ができるというのは、いかにIT技術が進化したとしても必要なことなのかもしれませんね」(大槻氏

3階のラウンジ奥には、社長室が配置されている。ガラス張りの部屋でラウンジの全てを見通せるつくりだ。もちろん社長室の内部もオープンとなる。まるで社風を表しているようだ。

3階多目的ラウンジ全景

3階多目的ラウンジ全景。中心には卓球台が置かれ交流を深める ためのツールとなっている

3階多目的ラウンジ窓側

3階多目的ラウンジ窓側。マッサージチェアの奥がガラス張りの社長室となっている

「エントランスとラウンジに関しては相当な時間をかけました。2014年2月12日をオープン日と決めていましたが、実際に工事を開始したのが同年1月15日。内装会社の皆様にはかなり無理を聞いてもらいました。あらためて出来上がったものを見ると、タイムリミットぎりぎりまで検討を重ねた甲斐があったと思います」足立氏

そして4階から7階のフロアがグループ会社を含めた執務室となる。入室すると、パーテーションの低い見渡しのよいオープンなオフィスが広がる。

「以前のオフィスでは打合せをするのにも会議室の予約が必要でしたので本当に集まりたいときにすぐに集まることができないという意見がありました。今は、オフィス内にいくつものテーブルを配しており、いつでも集まって打合せができるようになりました。業務効率もコミュニケーションも格段に良くなったと社員からの評判もいいですね」足立氏

「フリーアドレスになると、誰がどこにいるかが分からなくなるのではと危惧する声がありました。それはチャットやスケジューラーなどのITツールを活用して把握できるようにしています」大槻氏

4階執務室全景

4階執務室全景。比較的低いパーテーションが見晴らしの良い環境 を生み出している

打合せ風景

執務室内にはいくつものテーブルを 配し、気軽に打合せが行われている

社内でPDCAサイクルを繰り返し常に「変わる。変える。」を継続していく

移転後、2ヵ月が経過したときに全社員を対象にアンケート調査を行った。アンケートに書かれた本音やいくつかの要望は、貴重なデータとして改善材料となる。

「フリーアドレスの導入やラウンジの設置に関しては、社内は好意的に受けとめてくれているようです。フリーアドレス席での使用ルールであるクリアデスクもきちんと守られています。ただ、ラウンジについては、一部ユーザーの声として、お昼の時間帯だけはランチ優先に使わせてほしいといった要望がありますので、ルールづくりを検討しています。このように、新しい取り組みについては社内でPDCAサイクルを繰り返し、次をどのようにするか常に検討をしています」(足立氏

「そして会社のビジョンである『変わる。変える。』の精神を今後も継続してオフィスに生かしていきます」(大槻氏

コラム ワークスタイル選択制度

ネットイヤーグループが実施している「ワークスタイル選択制度」は、会社と社員の双方の幸せのためにつくられた制度だ。育児や介護などの理由で、従来の勤務が困難になった社員を対象に、労働時間、日数、職務などの変更や選択ができるように設計。現在、8名が活用している。さらに、妊娠・育児休業者向けのプログラムを採用。職場復帰のためのスキルを自宅でも習得できるノウハウや講座を提供し、スムーズな職場復帰やメンタル面でのサポートを行っている。そして今後もネットイヤーグループでは、 多様な働き方を望む社員を積極的に活用できるように新たな制度の検討を続けていく。