株式会社オイシル

2025年3月取材

この事例をダウンロード
バックナンバーを一括ダウンロード

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

あえて広い面積を借りることで、会社を伸ばす原動力に

生鮮・食品業界にフォーカスし、有料職業紹介事業・採用コンサルティング事業・営業支援事業・Web支援事業で総合支援を行っている株式会社オイシル。これまで入居していたコワーキングスペースから賃貸オフィスビルへの移転となった今回、オフィスに込めた想い、今後の展望についてお話を伺った。

葛川 英雄 氏

株式会社オイシル
代表取締役


葛川 英雄 氏

Contents

  1. 感じ始めた「業務のしづらさ」。改善のために移転を決意
  2. 少し先の将来を見据えて、拡大目線で作り込んだオフィス
  3. 「離れて働く」を経験したからこそ、オフィスという同じ場所で働くことにこだわる
  4. チームでチャレンジしていくために、みんなで集まるオフィスは必要不可欠

執務室

執務室

感じ始めた「業務のしづらさ」。改善のために移転を決意

株式会社オイシルの設立は20226月。「『美味しい』を身近に」をミッションに掲げ、生鮮・食品業界に特化してさまざまな場面でのサポートを行っている。

最も力を入れているのは、生鮮業界の転職を支援する有料職業紹介事業だ。同社が運営する求人情報サイト「オイシルキャリア」に掲載されている情報は、日本全国のスーパーマーケットの水産・精肉・青果・惣菜・食品部門から、プロセスセンターの仕事まで幅広いのが特長だ。

「人材紹介会社は、毎月200社以上に設立の許認可が下りているといわれています。それだけ新しい会社が増えているわけですから、当然強みがなければ埋もれてしまう。私個人の経験として、営業職で8年ほど水産領域に携わってきましたから、強みとして活かせるのはこの分野だと確信し、今日に至るまでこの領域で事業を行ってきました」

そのほか、求人側に対して採用手法や利用媒体のアドバイスを行う採用コンサルティング事業、ターゲットの選定から商談化・組織マネジメントまで、商材を売るための幅広い支援を行う営業支援事業、ホームページや採用ページの制作代行を行うWeb支援事業などを従業員10名という少数精鋭で行っている。

旧オフィスは五反田エリアにあり、個室の各社専有部に加えて入居企業が共有で使用するコワーキングスペースを備えた大規模ワークスペースだ。専有部面積は7.5坪ほどで、最終的に8名で使用していたという。

「全員が出社するとオフィス内で頻繁に体がぶつかったり、お互いの電話の声が過度に聞こえてしまったりと、業務のしづらさを感じる部分が増えました。共用部も素敵な設えではありましたが、人材紹介業がメインのため個人情報を扱う内容の電話が多く、個室のフォンブース以外は使える場面が限られていました。さらに、同施設の『有料会議室とフォンブースの利用は11日合計3時間まで』という点もネックになり、移転を決意したのです」

202410月ごろから本格的な物件選定を開始。区が変わると諸手続きが発生することからエリアを品川区に絞り、さらに同社の事業特性から北品川~五反田、大井町が検討対象となった。

「いろいろな角度から絞り込んだ結果、最終候補になったのは大崎エリアと五反田エリアでした。しかし大崎エリアはちょうどいい面積帯のビルが見つからず、五反田エリアで探すことになりました」

面積を第一優先に、駅からの距離や女性用お手洗いの個数などを加味して検討を重ねた。物件選定からオフィスの構築まで全てのフェーズは葛川氏が中心となって進められたが、最終決定のタイミングでは設立メンバーの意見も重視したという。

「物件選定の最終決定のタイミングで、当社の設立から参加しているメンバーにもビルを見てもらいました。設立当初のレンタルオフィス時代からずっと一緒にやってきて、初めての賃貸オフィスビル。やはり最後は一緒に見て決めたいと思ったのです」

こうして、JR五反田駅から徒歩2分に立地する現在のビルへの入居を決定した。面積は約65坪と、旧オフィス専有部のおよそ8.5倍の広さだ。

「一般的に、スタートアップ企業は2年ごとにオフィスを移転するケースが多いといわれています。どうせ2年で移転してしまうなら、たとえ分不相応でも広い面積を借り、4年使った方がよいと考えました。1020名弱であれば、本来の適正面積は3540坪だと思います。あえて広い面積にすることで、事業を伸ばさなきゃ、人を採用しなきゃ、という気持ちが一段と強くなりました」

少し先の将来を見据えて、拡大目線で作り込んだオフィス

オフィス構築にあたっては、仲介会社から紹介を受けた2社の内装会社から対応がより好感触だった1社を選定。主にデザインの面で協力を仰ぎながらも、葛川氏自らが進んで担った部分も多いという。同社の受付システムもその一つだ。

受付システム

受付システム

「受付システムは自社で作りました。いつ・どの会社が・何人でという情報入力とともに通知が来て、来客情報が自動的に保管されるシンプルな仕組みです。自社でオフィスを構えると全て自分たちで用意しなければいけませんが、その分自分たちで作っていき、自分たちの色を出せるのは単純に面白みがありますね。コワーキングスペースは何もかもがセットアップされていて便利ですが、自分たちの努力で変えられる余地がほとんどありませんから」

それではオフィスの紹介に移ろう。オフィスのエントランスは白を基調とした空間に、前述の受付システムを搭載したタブレットを備え付けた。少し奥へ進むと右手には簡易な打ち合わせスペース、左手には会議室1室設けられている。

エントランス

エントランス

 打ち合わせスペース

打ち合わせスペース

会議室

会議室

「執務スペースと来客スペースをセキュリティで明確に区切りました。受付システムの件もそうですが、今後を見据えて上場基準やプライバシーマークの取得を意識したオフィスづくりを心がけています。『ベンチャーだから』ではなく、『ちゃんとした会社』としてやっていこう、という決意を表現したと言えるかもしれません」

セキュリティを解除して中に入ると執務スペースだ。エントランス同様モノトーン基調のシンプルな内装で、派手さこそないものの植栽の設置やBGMによって心地よく働ける空間になっている。先の記述の通り今後の増員を見据えた面積のため、現時点では半分以上が予備の執務席だ。

50名程度までは収容できる見込みなので、毎年10名増員して4年は使いたいな、という計算です」

入口のすぐ横にはパントリースペースが設けられている。洗練されたデザインのウォーターサーバーは従業員からの希望で取り入れたものだという。

パントリースペース

パントリースペース

「オフィス移転にあたって意見を募ったのですが、それほど強い要望は意外と出てきませんでした。そんな中でも、室内にウォーターサーバーがあると嬉しいですという声があったので、デザイン面も考慮して見合うものを手配しました」

窓側のカウンター席や置き型の簡易集中ブースなど、機能面の配慮もしっかりとなされている。執務室の奥には会議室がもう一部屋設けられた。

「最初は会議室1室でも十分かと思いましたが、将来的に4050人の組織になると考えた時に、1チーム56人として8チームほどできてくるわけです。各チームが週12回会議をするとなると1室では足りないなと思い、2室設けることに決めました」

カウンター席

カウンター席

簡易集中ブース

簡易集中ブース

「離れて働く」を経験したからこそ
オフィスという同じ場所で働くことにこだわる

コワーキングスペースから賃貸オフィスビルへの移転となった今回の事例だが、オフィスの運用面では大きく変わっていないという。

「ルールの追加もしていませんし、Googleカレンダーから選択するという会議室の予約方法も、旧オフィス時代とほぼ同じです。環境は変わりましたが、すぐに慣れてもらえたのではないかと思います。ただ、全社で行うミーティングを自前のオフィスの中心でやるのはベンチャーらしくてワクワクするというか、そういった気持ちの面での変化は大きいですね」

働き方についても、原則100%出社の固定席、という非常にシンプルなルールとなっている。これは同社の歴史の中で「離れた場所で働く」という経験があったからだ。

「当社には中部営業所(岐阜県)がありますが、これは当時やむを得ない事情で立ち上げたものです。私だけが岐阜で働き、他の従業員は東京にいるという状況が1年ほど続きました。いろいろと工夫はしましたが意思疎通は思った以上に大変で、やはり出社した方が、意志疎通の難易度は低くなるなと感じました」

今後は新卒採用も積極的に行っていく方針で、これも100%出社にこだわる理由の一つだ。

「経験者と異なり、新卒ですぐリモートワーク、というのはなかなか厳しいと思っています。この会社で育てる前提で採用するわけですが、何か業務で困った際にすぐに聞けないようでは思うような教育ができません。とはいえ、あくまでリモートが『教育という側面を考えた時に不向きである』という話ですから、例えば遠方に住んでいてもとても優秀な方や、子どもの世話とか、介護をしなければいけない方。こういった方々についてはもちろん柔軟に対応したいと考えています。このように柔軟さと甘さを履き違えないこと、そのバランスの見極めは難しいですが大事なことだなと思います」

チームでチャレンジしていくために、みんなで集まるオフィスは必要不可欠

こうして作り上げたオフィスは社内外から好評で、今後も費用対効果を鑑みながら改善を加えていく予定だという。

「従業員は満場一致で、広くなってよかったと言ってくれています。おかげさまで会社の外見はだいぶ整ったので、これからは内面の整備に注力したいと考えています。内面というのは会社の信念だったり、行動規範だったり、お客様にどういう価値を残すべきか、という目線を揃えたり。『オイシル』の一員としての在り方、認識を揃えていかなきゃいけないなと気持ちを引き締めているところです」

自らの手も動かしながら、将来への希望を詰め込んだオフィスを作り上げた葛川氏。最後に、オフィスを持つことの意義、想いを伺った。

「まず、オフィスを持つべきか否かで悩むなら持った方がいい。会社という組織は何かしらの目標に向かって取り組んでいくものですが、個人でできることと50人、100人といった人数でできることには何十倍どころではない大きな差があります。チーム一丸となってやっていこうと思った時に集まる場所がないというのは、やはり意思疎通のしにくさ、団結のしにくさに繋がりますから、オフィスという場所は絶対にあった方がいいです。また、会社として将来的な拡大を見据えているなら、少しでも広いオフィスを借りてその環境に追い付くように頑張る。そんなやり方も、会社を成長させるための原動力の一つになるのではないかと思っています。『チャレンジしたい』と思ったら絶対にするべきです」


株式会社オイシル
「この業界が好きなんです」と語る代表取締役の葛川氏は、水産卸売市場の競り人出身。そこから水産商社の営業、転職エージェントを経験してきたという一風変わった経歴の持ち主だ。今後は積極的な採用を行いながら、これまで培ってきた現場から流通までの幅広い知識と経験を活かし、生鮮・食品業界の発展に向け奮闘していくという。
(株式会社オイシル ホームページ►https://oishiru.jp)


この事例をダウンロード
バックナンバーを一括ダウンロード