ONESTRUCTION株式会社
2025年9月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
今後の大幅な人員拡大の採用計画を見据えて
あえてセットアップオフィスを選んだ
建設DXに関するソリューションや自社ツールの開発、提供、コンサルティングを主業務に業績を伸ばしてきたONESTRUCTION株式会社。同社は、順調な採用計画を見据えて東京オフィスの拡張移転を実施した。今回の取材では、新オフィスに対する思いや移転後の副次的な効果についてお話を伺った。

ONESTRUCTION株式会社
経営企画ユニット 広報
佐藤 日向子 氏
Contents
- 「建設とテクノロジーの架け橋になる」をミッションに技術提供を行ってきた
- 計り知れないプラスの効果を想定して東京オフィスを開設した
- 順調に推移する採用計画。次の移転先もセットアップオフィスがベストと考えた
- 旧オフィスの課題を解消できる理想的なオフィスに入居した
- 移転目的であった「面積拡張」以外に副次的なプラスの効果を生んだ

イベントスペース全景
「建設とテクノロジーの架け橋になる」をミッションに技術提供を行ってきた
2020年3月、鳥取市内に本社を置くONESTRUCTION株式会社が設立された。設立当時は、3次元モデリングの受託が事業の中心だったという。受託業務を続ける中で、建設業界におけるデジタルデータの相互運用性の低さに課題を感じていた。そこで、同社は建物ごとの3次元データに材料やコスト、スケジュールなどの属性情報を付加した「BIM(Building Information Modeling)」の仕組みに注目。そうしてソフトウェアに依存しないBIMデータの連携を可能にする概念である「openBIM®」の標準化を実現するためのプロダクト「OpenAEC」を自社開発した。
「近年の建設業界では、BIMの需要が高まっています。しかし、関係各社がそれぞれのクローズな環境で生産性を上げても、建設業界全体の最適化にはつながりません。しかもBIMソフトは高額で膨大な知識がなければ使いこなせません。『OpenAEC』は、簡単な操作で『openBIM®』を実現できます。それは、BIMデータを繋ぐアダプターのような役割を果たす国内唯一のツールなのです」
BIMの利用は、世界に比べると日本国内ではまだまだ定着しているとは言えない。それは、導入支援や導入後のサポートを行う企業が少なかったことも要因の一つだ。同社は「OpenAEC」シリーズの開発だけではなく、コンサルティングやソリューションサポートまでを行い、建設業界全体の技術標準の向上に努めている。設立からわずか5年の同社ではあるが、大手ゼネコンとの共同開発、東京大学との共同研究、「buildingSMART International(建設業界におけるデータの共有化、相互運用を目的とした国際的な団体)」の正式開発メンバーとしての参加など、BIM業界では不動の地位を確立しつつある。
計り知れないプラスの効果を想定して東京オフィスを開設した
同社の東京進出は2024年6月のこと。小規模なコワーキングオフィスからのスタートだった。リモートワークでの働き方も可能な同社ではあるが、東京に拠点を置くことには計り知れないプラスの面があると考えたという。
「当社は、リモートワークでの働き方を有効に活用しています。それでも東京オフィスを開設しました。それは将来的な営業展開を考えてのことです。東京では、カンファレンスや展示会が頻繁に開催されていますが、そうしたイベントへの参加やセミナーなどの開催は一つの大きな営業戦略になり得ると考えました。つまり、『いかに多くの企業に当社を知ってもらえるか』を考えたときに東京進出は必然だったのです」
もちろん、東京オフィスは単なる営業拠点の一つとして考えているわけではない。
「東京オフィスには営業部だけではなく、事業運営に必要な全ての部署を揃えています。東京という立地のメリットを生かして、広く情報のアンテナを張っていければと思っています」
その後、東京オフィスで大幅な増員もあり、旧オフィスの周辺で移転を行った。次に選んだのは他のフロアにホテルも入居しているビル内の約20坪のセットアップオフィス。ホテル同様の家具や内装でデザイン性は申し分なかったが、そこも手狭になるのに時間は掛からなかった。
順調に推移する採用計画
次の移転先もセットアップオフィスがベストと考えた
2025年3月、次の移転先探しを始める。新オフィスに求める条件は大きく以下の3つだったという。
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「採用計画は順調に進んでいます。ですから、今後もオフィス面積を拡張していく可能性があります。しかし、計画性もないまま軽率に移転を繰り返すことは避けなければなりません。そこで、初期コストの軽減や入居までのスピード感、オフィス構築に要する人員の労力などを総合的に考えて、次の移転先もセットアップオフィスを選ぶことがベストだと考えました」
旧オフィスの課題を解消できる理想的なオフィスに入居した
新オフィスへの入居は2025年7月だった。移転先はJR線「市ヶ谷」駅と「四ツ谷」駅の中間に位置する約90坪のセットアップオフィス。内装工事が完了したばかりのオフィスを内見しに訪れた従業員も一目で気に入り、移転を心待ちにしていたようだ。
「この十分な広さを持つオフィスならば、これまでのように当社がお伺いして会議を行うのではなく、今後はお招きする機会も増えるだろうと思ったそうです。また、オフィス内にイベントスペースを確保できることも移転先の条件に合致していました」
同社では、月1回以上のイベント開催を身近な目標としている。
「日本各地で自社開発の『OpenAEC』の講習会を行っています。その他、若手エンジニア向けの勉強会、学生を対象にした説明会など、色々なトピックを交えながらイベントを開催しています」
移転を機に100インチのモニターを購入した。

100インチのモニター
「モニターはイベントだけでの投影ではなく、通常のリモート会議でも活用しています。出社している従業員同士が会議に参加し、一つのモニターを見ながら同じ目線で話しています。それによって今までよりも一体感が生まれています」
イベントスペースは、外部への貸し出しも行っている。
「建設や鳥取県、AIといった当社と親和性のあるテーマであれば、貸し出しの相談に応じています。当社と同じ領域で課題解決に向き合う方々とこの場所から一緒に盛り上げたい。そんな気持から始めました。鳥取をテーマにしたイベントの実施に関しては、あえて鳥取から遠く離れた東京からの発信だからこそ意義があると思っています」
それではその他のオフィス機能を紹介していこう。エレベーターホールを降りると抜け感のある廊下が奥に延び、その途中に会議室がある。
「会議室は2室に増えました。社内外、共通の使用となります。新オフィスでは予約制としました」

抜け感のある廊下

会議室
さらに奥に進むと前述のイベントスペースが広がる。誰もが入れるエリアはここまで。右側のガラスで仕切られた執務エリアは「STAFF ONLY」としている。
「執務エリアとの境界は防音ガラスでしっかりと仕切られており、イベントスペースからの音漏れを防いでいます」

執務エリアとの境界
執務机は、エリア内の中央にまとめられた。新オフィスではフリーアドレスを採用したため、所々に従業員が使用する大きなモニターが置かれている。
「執務エリア内には、窓際に設けた『カウンター席』、グループで打ち合わせをするための『ファミレス席』、集中作業やWeb会議用の『テレカンブース』といった多様な働く場を揃えました。働く環境がより機能的になり、従業員のモチベーションも上がっているように思います」

カウンター席
移転目的であった「面積拡張」以外に副次的なプラスの効果を生んだ
同社は2025年6月、大阪にも拠点を立ち上げている。鳥取市で生まれた会社が、今では鳥取、東京、大阪の3拠点を有するようになった。
「東京オフィスには、海外の大学からのインターン生も在籍しています。段々とグローバル化を体感するようになってきました」
同社は海外在住者を含むフルリモートメンバーが多く在籍していることもあり、バーチャルオフィスを活用して、社内コミュニケーションを図ってきた。そんな環境下での東京オフィスの拡張だったが、オフィス移転の副次的なプラスの効果が生まれているという。
「旧オフィスはとにかく狭く、座席は足りておらず、出社したくともできない従業員もいる状況でした。会議室も足りず、常に譲り合って使用していました。当社はリモートワークも可能ですが、旧オフィスの広さですと限られた人数しか出社ができず、東京オフィス所属の従業員のうち、数人はフルリモートで働く従業員もいました。移転後も、特に出社ルールは変えていませんが、席数が増え、広々とした空間で作業や対面での会議ができるようになり、従業員の出社率は少しずつ上がり、鳥取本社や大阪オフィスのメンバーが立ち寄る機会も増えました。今まで、対面で会う機会がなかった方々との対話も増えています。結果としてエンゲージメントも高まり、それが業務効率の向上に寄与しているように思います」
理想は、「このまま出社ルールは変えずに、自然と人が集まるオフィスづくり」だと語る。
「移転後、異なる部署のメンバー同士で会話をしている姿をよく見かけます。それによって部署の垣根を越えたコラボレーションやお互いの専門知識や得意な領域を生かした助け合いが生まれているようです。これこそがオフィスで顔を合わせることの最大の効果だと思っています」
さらに、リクルーティングに関してもいい方向に向かっているという。
「当社は、リファラル採用(従業員が友人や知人を紹介して採用する方法)の割合も高いです。面談時にオフィスにお越しいただいた際には、働きやすい雰囲気を感じてもらえるようで、かなりの方に前向きな入社を検討してもらっています。魅力的なオフィスは、採用面での効果にも繋がることを実感しました」
今後も、魅力ある人材をどれだけ多く確保できるかが同社の課題となる。
「ありがたいことに建設業界出身の方には当社の事業内容や動向を注目していただいているようで、それが当社の採用に繋がっている部分があると自負しています。すでに『BIM』の必要性を理解していただいていることは、大きなアドバンテージになっていると思っています。しかし、建設業界出身者以外の採用については、『BIM』ではないPRポイントが必要になります。例えば、当社のツールがどのようにまちづくりに貢献しているのかとか、建設DXの推進によって人々の暮らしがどれだけ変わるのかとか。そういった当社が社会にもたらすインパクトに関しては、社内外に積極的に発信していく予定です」
最後にオフィスの必要性についてお聞きした。
「当社は、『buildingSMART』という建設業界におけるデータの共有化や相互運用を推進する団体に所属していますが、やはりオンラインよりもリアルの会議に出席した方が深い人間関係を築くことができると実感しています。会議前後の雑談の中にアイデアやヒントが隠されていることも多いようです。それと同じで、顔を合わせることで得られる情報は思っている以上に重要だと再認識しています」
そして今後も、鳥取から始まったスタートアップというアイデンティティを残しながら、東京オフィスだからこそできることを模索していきたいと語る。
「まずは、エントランスやイベントスペースを使って、鳥取県の観光PRや建設、鳥取、AIを中心としたテーマのイベントの実施やイベントスペースの貸し出しなど、今までと違う角度からのアクションを心掛けていきたいです。たとえそれが一見遠回りに見えることであっても、それが当社のことを知るきっかけになればいいと思っています」

エントランス

業界全体を俯瞰的に捉える冷静な視点と迅速な行動力が魅力のCEO西岡大穂氏と、国内外のさまざまな企業と渡り合える知識量と技術力を武器に、日本を超えて世界でも活躍するCTO宮内芳維氏。ONESTRUCTION株式会社は、その両輪が組み合わさることで事業を拡大させてきた。今後も世界標準を見据えながら、建設業界全体に独自のソリューションを提供していく。


 
          
