パーソルキャリア株式会社

2026年4月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

「GIVE POWER」を主軸に
人と組織の力を最大限引き出すオフィスへ

人材紹介サービス・求人メディア運営・転職支援など、多様な「はたらく」を支える事業を展開するパーソルキャリア株式会社。同社は2024年10月、分散していた複数拠点を集約し、22年ぶりに本社機能を麻布台へ移転した。約3,000人が利用する新オフィスでは、「GIVE POWER」をコンセプトに、コミュニケーションやはたらき方を再設計。約6ヵ月をかけてコンセプトを構築した新本社について、その背景と想いを伺った。

梅村 太嗣 氏

パーソルキャリア株式会社
人事本部
戦略総務部
ゼネラルマネジャー
梅村 太嗣 氏

高杉 智晴

三幸エステート株式会社
第三営業部
高杉 智晴

Contents
  1. ABWを導入していたものの、明確なはたらき方は想定されていなかった
  2. ミッションを推進する場として、どんなオフィスが必要かを考えた
  3. オフィスビルのコンセプトまで含めて、本社移転先を検討した
  4. 約6ヵ月をかけて、「GIVE POWER」のコンセプトを構築
  5. 社外との交流、社内の協働。その両方を支える空間を目指した
  6. 完成形ではなく、従業員一人ひとりが育て続けるオフィスへ

21階 エントランス

21階 エントランス

ABWを導入していたものの、明確なはたらき方は想定されていなかった

同社の旧オフィスは、丸の内・大手町エリアなどの複数拠点に本社機能が分散していた。加えて、西新宿拠点の統合なども段階的に進めており、今回の移転ではそれらの拠点を集約する形となった。

「営業組織と、それに紐づく企画組織などを合わせて約3,000人規模でした。当初は100%出社が当たり前でしたが、コロナ禍以降は全社平均で約30%前後、一部の間接部門では10%程度まで出社率が下がっていました」(梅村氏)

同社では以前から緩やかなグループアドレス制を導入していたものの、実態としては固定席に近い運用だったという。

「グループアドレスといいながらも、実際には誰がどこに座るかが暗黙的に決まっていました。自席で食事をするなど、その場で1日を過ごすはたらき方がほとんどでした」(梅村氏)

また、旧オフィスでは現在のような明確なコンセプトは設けていなかった。

「当時は全員出社が前提であり、人材業界全体も成長し続けていた時代でした。そのため、『いかに多くのお客様と接点をもつために、効率良く仕事を進めるか』を重視した島形レイアウトで、みんなで声を掛け合いながらはたらく空間でした」(梅村氏)

時代の変化に合わせてABWも部分的に導入していたものの、現在のようにはたらき方やコミュニケーションまでを見据えた設計ではなかった。

ミッションを推進する場として、どんなオフィスが必要かを考えた

移転のきっかけの一つとなったのは、旧オフィスの契約更新のタイミングだった。しかし、同社にとって今回の移転は、単なる集約移転ではなかった。

「これまでは『次も同じようなオフィスを』という考え方でした。しかしコロナ禍を経て、オフィスは本当に必要なのか、人が集まる意味とは何かが改めて問われるようになりました」(梅村氏)

そうした時代の変化を受け、経営層と今後のオフィスについて議論を重ねていったという。

「社長に『これからのオフィスをどうしたいですか』と話したところ、『目的をもって来る場所に変えたい』という想いが一致したのです」(梅村氏)

そこで目指したのは、単なる業務の効率化ではなく、「ミッションを推進する場」としてのオフィスだった。

2019年に「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」というミッションが制定されました。そして今回、ミッションドリブン(Mission-Driven)を加速させる場として、オフィス構築を考えました」(梅村氏)

これが、本格的な移転プロジェクトの出発点となった。

オフィスビルのコンセプトまで含めて、本社移転先を検討した

物件検討が本格化したのは、2023年初頭。三幸エステートの高杉からの提案のもと、最初に内覧したのは銀座エリアの物件だった。その後も赤坂・田町・日比谷など、幅広いエリアで複数物件を比較検討していった。

「同じ丸の内・大手町エリアにこだわる必要があるのか、という視点をお持ちでした。私も既存のイメージにとらわれず、多角的な視点でさまざまな物件をご提案しました」(高杉)

「三幸エステートさんは当社への理解度が非常に高く、情報もオープンに共有していただけたため、安心して相談することができました」(梅村氏)

同社はこれまで、「立地」「賃料」「周辺環境」といった条件中心の物件選定を行ってきた。しかし今回はそれらに加え、「オフィスビルのコンセプト」や「デベロッパーの考え方」も重要な判断基準となった。

「どのビルも魅力的でしたが、完璧な物件はありませんでした。そこで今回は、そのビルがどんな想いでつくられているかを重視したのです」(梅村氏)

検討を重ねる中で候補に挙がったのが、麻布台の超高層オフィスビルだった。

「最初は『非常にスケールの大きいビル』という印象でした。ただ、建物の背景や歴史、つくられた意図を知るほどに、納得感が強くなっていきました」(梅村氏)

最終的な決め手となったのは、ビルや街が目指す方向性と、自社が実現したいオフィス像との親和性だった。

「本社は長期にわたり利用する場所です。ビルや街の価値観が自社とずれてしまうと、長い目で見て良い関係は築けません。だからこそ、当社の目指すオフィス像と合致するかが大切でした。人を中心に、豊かなつながりを生み出そうとする考え方に強く共感したのです」(梅村氏)

そうして検討を重ねた結果、地下鉄「神谷町」駅直結の大規模複合ビルへの本社移転が決定した。

約6ヵ月をかけて、「GIVE POWER」のコンセプトを構築

今回のプロジェクトでは、コンセプト設計に約6ヵ月を費やした。その背景には、見た目のデザインではなく、「どんな行動やコミュニケーションを生み出したいか」から逆算してオフィスを考える姿勢があったという。

まず実施したのは、経営層へのインタビューだった。

「新しいオフィスで何を実現したいのか、どんな会社でどんな従業員であふれる組織にしたいのか。ヒアリングを通じて、会社としての想いや今後の方向性を整理していきました」(梅村氏)

さらに同社では、「外向き」「自分ゴト化」「成長マインド」といった行動指針をもとに、さまざまな組織のマネージャー層を集め、複数回のグループワークも実施した。

「日頃どのような行動をしているのか、メンバーに何を求め、今後どんな行動を強化・改善していきたいのかを徹底的に議論しました。私自身、営業企画時代から『答えは現場にある』と考えていたため、実際に高い成果を出している組織から考え方を抽出していったのです」(梅村氏)

グループワークでは、部署や役職を超えて活発な議論が行われた。

「とにかく前向きで、熱量が高かったですね。同じ会社でも普段関わりの少ないメンバー同士が、与えられたテーマに対して本気で議論していたのが印象的でした」(梅村氏)

こうして、経営層と現場の想いを掛け合わせながら、「GIVE POWER - the place to gain, share and enhance OUR power -」というコンセプトが生まれた。

「議論を通じてやる気をもらうこともあれば、隣で頑張っている人を見て力をもらうこともある。人と人が力を与え合いながら、一緒に成長していく。そんな想いを込めています」(梅村氏)

社外との交流、社内の協働。その両方を支える空間を目指した

そうして完成した新オフィスは、2.5フロア・約3,600坪に及ぶ大規模空間だ。

GIVE POWER」のコンセプトのもと、「外と接する」「コミュニティを育む」「スキルを発揮する」「越境し、協働する」という4つのオフィス行動指針を定め、それぞれに紐づく多彩なエリアを用意した。

まず、社外と交流する場として、エントランス奥にはヘラルボニー社が手掛けたオリジナルアートを展示。知的障がいのある作家たちによる独創的な作品が来訪者を迎える。

21階 従業員主体によるMISSIONアート

21階 従業員主体によるMISSIONアート

その近くには、応接会議室イベントスペースが広がり、イベントや打ち合わせを通じて社外との交流を深められる空間となっている。イベントスペースの近くには配信スタジオも設け、広報活動を強化する機能も新たに加えた。

21階 応接会議室

21階 応接会議室

21階 イベントスペース「OPEN LOUNGE」

21階 イベントスペース「OPEN LOUNGE」(右奥壁面はヘラルボニー社のオリジナルアート)

21階「ON AIR」ランプ

21階「ON AIR」ランプ

21階 配信スタジオ

21階 配信スタジオ

「エントランス付近のアートは、従業員が当社ミッションをワークショップを通してビジュアル化し、TokyoDex社のアーティストの手で仕上げたものです。執務エリア内にも数多く採用しており、社内の待ち合わせにも利用されています」(梅村氏)

執務エリアには、「コミュニティを育む」場として、従業員専用のカフェや多目的スペースを新設。同社として初めて本格的な有人カフェを導入した。また、東京タワーを一望できる窓際にはソファ席を配置。景色を楽しみながらリラックスできる空間とすることで、自然な交流が生まれる場を目指した。

20階 従業員用のカフェ

20階 従業員用のカフェ

「当社は高い当事者意識を持って仕事に取り組む従業員が多く、つい業務に集中し続けてしまう傾向もありました。だからこそ、軽食やドリンクを気軽に利用できる空間を設けることで、意識的にオン・オフを切り替えてリフレッシュできる場所をつくりました」(梅村氏)

ほかにも、集中ブースやテレブースを数多く設置。その日の状況や業務に応じてはたらく場所を選択できるようにすることで、一人ひとりが最適な環境でスキルを発揮できるよう設計している。

また、先行して完成した2フロアの運用開始から約1年半後には「越境し、協働する」をテーマに、新たに従業員専用エリアを構築。プロジェクトルーム、パネル、イベントの3つの機能を設け、部署や役職を超えた交流や挑戦を後押ししている。

22階 執務エリア

22階 執務エリア

「先行してオープンしたフロアでは、社外交流を目的としたイベントスペースを設けていましたが、想定以上に社内イベントでも活用されていました。そこで、部署や役職を超えた交流をさらに後押しする場として、新たに従業員専用エリアを構築したのです」(梅村氏)

同社プロジェクト内では、コロナ禍以降に増加した短時間での会議にも課題感を抱いていた。

「オンライン化が進み、短時間で結論を出す会議が増えました。一方で、じっくり意見を交わす機会は減っていたように感じます。効率だけを追求すると、本音で向き合う場も少なくなってしまう。だからこそ、ここではしっかり対話してほしいと考えました」(梅村氏)

そこで、膝を突き合わせて話すための場として、それぞれ異なるコンセプトを持つ特徴的な会議空間7室設計。深い議論や新たな発想を生み出す場として位置づけた。

 22階 コンセプト会議室「ほのぼの」

22階 コンセプト会議室「ほのぼの」

また、入口のパネルゾーンには、社内表彰者の成功事例を紹介する「BRAVOWall」、個々の想いや挑戦を共有する「Will Canvas」、従業員の特技やタレント情報を掲示する「Talent Gallery」を設置。従業員同士が互いを知り、新たな交流や刺激が生まれる仕掛けも取り入れている。

さらに、最大80名が着席可能な社内イベント専用スペースも用意。部署や職種を超えた交流と、新たなシナジーが生まれる空間として活用されている。

完成形ではなく、従業員一人ひとりが育て続けるオフィスへ

同社は新オフィスを完成形とは捉えていない。今後は、この空間をいかに活用し、企業文化として根付かせていくかが重要になるという。

「現状は、このオフィスを使いこなせている状態とまでは言えません。これからは使い倒すことを極めていきたいですね。オフィスも自宅のように、従業員一人ひとりが自分ゴトとして捉え、自律的に運営していける状態を目指しています」(梅村氏)

最後にオフィスの必要性についても伺った。

「誰かと一緒に仕事をしたり、何かを生み出したりするためには、オフィスは必要不可欠だと思っています。家族にとっての『家』のように、人が集まり、想いを共有する場所として必要なのではないでしょうか。また、オフィスの在り方は会社ごとに異なるからこそ、その企業ならではのこだわりが大切だと思っています」(梅村氏)

パーソルキャリア株式会社

転職サービス「doda」やハイクラス転職などの人材紹介、求人広告、新卒採用支援などを展開するパーソルキャリア株式会社。個人のキャリア形成支援から企業の採用・組織課題解決まで幅広く携わり、近年は副業・フリーランス活用支援「HiPro」にも注力。「はたらく」を取り巻く価値観が変化する中、多様なキャリアの選択肢を支える企業として新たな価値創出を目指していく。


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