- 認証機関の役割は規格審査を行って適合の判を押すだけではない
- 製品の品質と安全性確保、及び自社の価値を高める企業の存続をも左右する生命線
- 数年先までの採用計画を見据えて十分に広い空間を確保した
- 常にコミュニケーションが図れるオフィス環境の整備を目指した
- 働く環境を向上させる。それが生産性の向上につながる
認証機関の役割は規格審査を行って適合の判を押すだけではない
企業にとって商品価値を高めることは市場開拓の大きな力となる。そうした信頼を得るためにSGSのような認証機関が存在する。SGSは全世界で165ヵ所の拠点を持ち80,000名を超える社員が活躍。今回取材のSGSジャパンは日本拠点として1922年に開設された。
「グローバル展開している認証機関は世界中に数社ありますが、当社はその中の一社として、各国で異なる規格にも対応した認証業務を行なっています。第三者による認証は規格に準拠している証明を与え、いわゆるお墨付きを与えることになります。それに加えて今後拡大が見込まれるのが、自社や業界の規格・ルールをサプライチェーンに適用することによる高品質や高いレベルの安心などの価値の訴求を行うことによって、自社の製品ブランドの価値を高める動きです」(鈴木信治氏)
「競合他社はいくつかあるのですが、その多くは認証の分野でしか業務を行っていません。当社の業務の中で認証は10ある事業分野の一つであり、検査、試験、分析を含めた幅広い業務を様々な、事実上全てのインダストリーに対して展開しています。例えば、試験、分析では消費者に届く様々な物品が規制や規格に基づいた仕様を満たしているかについて試験し、試験後は報告書を提出。試験機関として規格を満たしていることを証明します」(鈴木信治氏)
「認証の場合、2つのパターンがあります。ISOのような国際規格に準拠している事を証明する場合と、その国や業界、企業の独自基準などに準拠していることを証明する場合です。そのどちらにも対応するために各国の規制や基準を知らなくてはなりません。このような規制や基準は改訂されることもあります。そうした情報をいち早く入手するためにSGSの世界最大のグローバルネットワークの存在がとても重要です」(竹内裕二氏)
「SGSのグローバルネットワークは認証分野に加えて、様々な場面においてお客様のリスクマネージメントに貢献しています。海外での大規模プラントプロジェクトにおけるサプライヤの監査、種々のプラント機器・製品、電気・電子製品、食品、繊維製品、玩具といった輸出入の際の検査・試験などがその例です。SGSは日本企業の技術競争力の向上にも貢献しています。自動車の自動運転、高度に複雑化し高機能化するロボットや医療機器など、日本の最重要産業分野での安全性の担保のための技術的アドバイス、認証、そしてその認証基準や規格の策定など、技術革新が進むに連れてSGSの活動領域も日々拡大しています」(佐々木佑輔氏)
製品の品質と安全性確保、及び自社の価値を高める企業の存続をも左右する生命線
「最近は食品の分野で安全性が問われる事件が多く、以前から消費者の関心が高い日本では特に市場は敏感に反応します。当社は、農産物の調達現場から生産、物流、販売までのサプライチェーンの審査や認証も行っています。様々な規格に準じて消費者に安心・安全をお届けしているのです」(竹内氏)
「当社の業務内容を話すと『安全』という言葉が頻繁に出てきますが、『リスクマネージメントを行い、リスクを減らす』という表現がその中身をよく表しています」(鈴木氏)
品質や安全性が企業の存続を左右する、その重要性から企業ニーズは年々増加。SGSジャパンでも多くの社員が必要とされ、常に社員募集を行っている。
数年先までの採用計画を見据えて十分に広い空間を確保した
以前のオフィスは横浜みなとみらいに立地する高層ビルだった。だが増員を進めている中で館内での増床ができないと分かり、本社移転を検討することになる。
「移転直前はとにかく手狭で視覚的に見通しが悪いオフィスでした。さらに会議室が少なく、数人が集まれる場所も十分にありませんでした」(牧田氏)
「今後の経営戦略を考えると人材の採用・増員は継続的な活動となります。そのために数年先までの採用計画を見据えて広めの面積を確保しようと考えました」(鈴木氏)
そうして2014年7月、移転に関しての事前調査を始める。
「早々にオフィス仲介会社の三幸エステートさんから色々なビル情報を提案いただきました。しかし条件に合う候補ビルがなかなか見つかりませんでした。そこで考え方を変えてすでに一つの事業部が入居していたビル群の中に集約することにしたのです。空室状況を確認したところ広い面積も確保できることが分かった。そこから細部にわたる条件交渉を行っていきました」(牧田氏)
「入居していたのは試験・分析を行うケミカルラボラトリーの部門です。そこと本社との行き来にかかる時間は解決したい問題の一つとなっていました。そこには物理的な距離に加えて心理的な距離があり、社員同士の交流も限定されていました」(鈴木氏)
中心部ではないといっても同じ横浜市内。距離的にもさほど離れてはいない。さらにコストメリットも大きい。立地に関して問題になることはあまりなかった。
2014年9月に賃貸借契約を締結し、それから内装についての打ち合わせが始まる。数社に声を掛けてコンペを実施、10月に発注会社を決める。
「入居までの時間が限られていたので、あえて社内の部門を横断するような大きな移転プロジェクトチームはつくらず、トップダウンのやり方で企画を進めました」(牧田氏)
「オフィス構築のアイデアを得るために、2社にお願いして先進的なオフィスの見学をし、相当数の先進オフィス事例を資料で調査しました。三幸エステートさんのWebサイト『先進オフィス事例』も参考にしました」(鈴木氏)