- 良質なプロダクトは良質なオフィスから生まれる。一切妥協なしのオフィス物件探し
- 街から受ける刺激も創造性につながる。渋谷にこだわり続ける理由とは
- 社内コミュニケーションを促進させるさまざまな機能の追加を検討する
- 良質なサービスを提供するためには良質な環境が必要となる
- 社内外とのつながりを念頭におき、新たに生まれた社員食堂SmartKitchenの機能
- ルールではなく推奨。個々の自主性に任せたオフィス運用を行っていく
良質なプロダクトは良質なオフィスから生まれる。一切妥協なしのオフィス物件探し
前オフィスは渋谷駅から徒歩5分という利便性の高い立地。6階建てのオフィスビルの2階125坪を、移転当初は8名の社員で使用しはじめた。しかし事業拡大により、段階的に社員数が増えていく。もともとスペースに余裕があったが、予想より早くオフィスが手狭になってしまった。より快適な職場環境を維持するために、移転を決めた。
街から受ける刺激も創造性につながる。渋谷にこだわり続ける理由とは
「今後の増員を見据えて、物件を探し始めたのは2014年6月くらいです。前のオフィスに入居したのが2013年10月ですから、移転から1年も経っていません。予定より随分と早い段階での計画となりました」(菊池貴則氏)
移転先の条件はかなり限定的だった。300坪以上のワンフロア、そして渋谷という立地。
「前オフィスの周辺(渋谷桜丘町)がベストではありましたが、条件通りの物件はありませんでした。そこで少し範囲を広げて探したのです。恵比寿や中目黒といったエリアも検討したのですが、最終的には今回の移転先である渋谷神宮前で落ち着きました」(佐々木真由美氏)
「渋谷というのは新しい文化を生んできた街です。色々なノイズが溢れ、刺激がある。そして多種多様な情報がなめらかに交じりあっている。とても魅力的な街です。それが設立以来ずっと渋谷にこだわり続けている理由です」(松岡洋平氏)
2014年11月に移転先を決定。契約を締結させたと同時に内装デザインに入る。
「非常にタイトなスケジュールでした。しかも本来の計画では3階フロアだけを賃借する予定でしたが、ちょうど契約締結の時期に2階部分に空室が出まして。当初考えていたレイアウトやスペース計画がだいぶ変わりましたね」(菊池氏)
社内コミュニケーションを促進させるさまざまな機能の追加を検討する
そこで前オフィスのコンセプトをベースに、新たにコンセプトを見直すこととなった。参考までに当時の取材記事の中から、基社内コミュニケーションを促進させるさまざまな機能の追加を検討する本コンセプトについての記述を抜粋する。
「働きやすい環境のためには固定席とは別の自由な空間が必要だと考えたのです。アイデアが煮詰まってしまったときに気分転換できる場所を用意する。固定席で自分の居場所を確保しながら、そこから抜け出してくつろげる『場』。そこで一人で二つの空間を使うことを想定したデザインを考えてもらいました。そしてこれからも、単に空間効率だけを考えて人をギュッと押し込むのではなく、余裕のある空間を維持していきたいと思います」
今後の企業の成長をふまえてオフィスコンセプトを見直す。
その結果、下記の6つに生まれ変わった。
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良質さを身にまとう
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生産性よりも創造性
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多様なワークスタイル
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なめらかなオフィス
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成長するオフィス
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良質なコミュニティづくり
良質なサービスを提供するためには良質な環境が必要となる
そうして具体的な移転プロジェクトが始動する。プロジェクトは共同代表の鈴木氏を中心に、その周りを複数部署のメンバーたちがサポートしていく。そんな緩やかなチームが編成された。
情報システムマネージャーの菊池氏が全体のオペレーションと電気系を統括、ボタニカルデザイナーでRE代表の江原理恵氏がデザインをディレクション、株式会社ヴィスの金谷常務が実際の設計・施工を担い、財務担当ヴァイスプレジデントの堅田氏が契約まわりをみた。
「打ち合わせの基本はメールとメッセンジャー。デザイン案の確認などは全員で集まるようにしました。リアルな打合せとオンライン上での打合せ。うまく併用して出来たと思います」(菊池氏)
新オフィスへの要望を、週一回行われる全員参加のランチミーティングの議題にするなどして、大まかな要望を把握した。そのあと、デザインディレクションの江原氏を中心に、個別に全社員にヒアリングを行い、様々な要望を聞きだした。
「少しでも多くの回答を得るために質問もシンプルなものにしました。『どんなオフィスにしたいか?』『今のオフィスでいいと思うところはどこか?』など。全員に聞きました」(松岡氏)
回答数は120件以上。社員数を大きく上回る回答が集められた。
「活発なコミュニケーションを生み出すにはどうすればいいのか、いかに刺激を与えることが出来るか、そのためにはどのような設備が必要なのか、多面的に意見交換が行われました」(松岡氏)
「本当に時間との戦いでしたね。2月に移ってきたのですが、その時点では完成していない部分のほうが多かったかもしれません」(菊池氏)
コンセプトと社員からの要望、それにデザインディレクションの江原氏やオフィス設計会社のヴィスからの提案とをうまく組み合わせる。コンセプトの一つである「なめらかなオフィス」というのは、ワンフロア内での区切りのないオフィスにもあらわれている。
「先ほども少しお話しましたが、渋谷の街は色々なものが交じり合うことで新しい価値を生み出しています。感じ取ったイメージはフラットな環境だからこそ誰もがキャッチできる。それと同様にオフィス内でも、区切りを設けないことでひらめきや発想をキャッチしやすい環境にする。それが結果として創造性と生産性に関わってくればいい。そう思っています」(松岡氏)
また、同社では在宅勤務や完全なリモート勤務は推奨していない。仕事をする場所は原則オフィスの中となる。
「業務効率を考えると一人で黙々と進めるほうがスピードは速いのかもしれません。しかし生産性を突き詰めていくよりも、色々な人と話し多くの刺激を受けながら生まれる製品プロダクトのほうが圧倒的に高いクオリティになると思っています」(松岡氏)
「そのほか、軽食や飲み物のコーナーをあえて1ヵ所にすることで、メンバーが自然と同じ場所に集まるような仕組みをつくりました。普段接しない人同士の接点を増やすことを目的としています」(佐々木氏)
「入居後、1ヵ月くらい経った時期に全社アンケートを実施しました。そこで空調などの改善要望を頂き、4月に工事を完了させたところです。今後も要望を聞きながら随時対応していきたいと思います」(菊池氏)
そうして2015年5月末、移転プロジェクトは終了した形となる。