テックタッチ株式会社

2025年4月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

❝来たくなる❞を科学する
成長企業テックタッチが挑んだオフィス改革

デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)のリーディングカンパニーであるテックタッチ株式会社は、急成長に伴う人材の増員をする一方で、コミュニケーションの質や文化継承に新たな工夫が求められるようになっていた。そんな中、同社が選んだのは、働く人が自然と集い、交流が生まれるオフィスへの移転という選択だった。今回の取材では、オフィスが組織にもたらす影響、そして「人を中心に据えた」組織づくりへの想いについて、取締役CEO・井無田 仲氏に話をお聞きした。

井無田 仲 氏

テックタッチ株式会社
取締役CEO


井無田 仲 氏

Contents

  1. 定着こそDXの鍵。現場を支えるテックタッチのナビゲーション戦略
  2. バリューの一つ「いつでもごきげん」に表れる、風通しが良く人を大切にする企業風土
  3. 急成長に伴うコミュニケーション等の課題。「来たくなるオフィス」の構築を決断
  4. 新オフィスではセキュリティや天井高を重視。その中で今回のオフィスに出会った
  5. ラウンジやリフレッシュエリアをコミュニケーションの場として有効活用
  6. 出社率が自然と上昇。オフィスが企業文化浸透を後押し

ラウンジ

ラウンジ

定着こそDXの鍵。現場を支えるテックタッチのナビゲーション戦略

テックタッチ株式会社は、201831日に設立された。「どんなに高度なシステムでも、現場が使えなければ意味がない」。そんな課題を解決するために、同社はデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)「テックタッチ」を提供している。各社さまざまなシステムが使用される中、「使い方が分からない」「操作方法が難解で目的までたどり着けない」という悩みは思いのほか少なくない。テックタッチのソリューションは、そうした既存の業務ツール上に操作ナビゲーションを追加するというものだ。

「当社のお客様は大企業や官公庁が中心です。最近は『Salesforce』や『SAP S/4HANA』のようなWebベースの業務ツールを導入する企業が増えています。でも現場では、新しいツールの使い方に戸惑うことも多い。だからこそ、私たちは現場の困りごとに寄り添うソリューションを提供しています」

前職でBtoCビジネスに携わってきた井無田氏は、テクノロジーが人々の生活や意識に大きな変化をもたらすことを実感。「テクノロジーの力をうまく活用すれば、業務の生産性も、働く楽しさも大きく変えられる。結果的に、それは働く人だけでなく、社会全体にとっても大きな価値や幸せにつながるはず」と確信する一方で、BtoBの領域ではその恩恵が行き届いていない現実にもどかしさを感じていたという。現場に寄り添うソリューションを届けたい。そんな想いから同社を立ち上げ、現在ではDAP市場の国内シェア1位を獲得する企業へ成長を遂げている。

バリューの一つ「いつでもごきげん」に表れる
風通しが良く人を大切にする企業風土

同社は2025年にGreat Place To Work® Institute Japan調査で「働きがいのある会社ランキング」で10位に選出されている。その背景には「人のために会社があるべき」という明確な理念がある。井無田氏は、従来の"会社のために人がいる"というあり方に疑問を抱き、「人が最大限パフォーマンスを発揮できる環境こそが、会社の成果にもつながる」と考え、組織設計に取り組んできた。社員の声をもとに設計された仕組みや社内制度もその実践の一環だ。「個々のパフォーマンスを最大化するには人のために会社があるべき」。こうした価値観は、同社のバリューの一つである「いつでもごきげん」にも表れている。この言葉は、創業当初にメンバー全員で議論して決めたものだ。

「私はファシリテーター役に徹していましたが、自然とこの言葉が全員から生まれ出てきました。出た瞬間、これ以上の言葉はないといった感じでとても盛り上がりましたね」

急成長に伴うコミュニケーション等の課題
「来たくなるオフィス」の構築を決断

移転前は、約2年半にわたり東京都港区・汐留のサービスオフィスに約75名で入居していた。しかし、専有エリアが限られているため、出社率を40%程度で抑え、入りきらない従業員は共用ラウンジ等で業務を行う状況が続いていた。増床を行ったもののあまりにも急激な人員増加のため、スペースコスト面での限界が見え始めており、社内からは、共用部のテレフォンブースが使えないといった不満の声も挙がっていたという。また、人材育成や企業文化継承の観点から出社率の向上が必要と考える中で、「人が集まっても交流が生まれにくい」というコミュニケーションの課題が浮き彫りにもなっていた。

想定以上に早いスピードで順調に成長してきたため、人材育成や企業文化の継承といった部分でさらなる強化が求められるフェーズに入っていました。それらの課題解決のためには顔を合わせることが重要だと感じ、出社頻度を高めたいと思ったのです。そして、単に人が集まるだけではなく、『来たくなるオフィス』をつくる必要がありました」

こうした課題から、より広く社内に交流が生まれる通常オフィスへの移転を決断した。

「私たちが今いるフェーズを考えると、ただ業務を効率的にこなすだけではなく、チーム全員で何かを一緒に創り上げていくことが大切な段階だと思っています。だからこそ、出社の意味やオフィスの役割も変わってくるのではと。自然な会話やアイデアが創出・交換されるといった、"みんなで創っている"という空気感が必要でした。そんな自分たちらしい働き方を実現するために、移転を決断したのです」

新オフィスではセキュリティや天井高を重視
その中で今回のオフィスに出会った

新オフィスを探すにあたり、同社が重視したのはビル自体のセキュリティと天井の高さだった。

「当社のビジネスモデルを考えて、セキュリティ面は必須でした。あとは天井の高さですね。普段の業務は性能の良いヘッドセットを用いて遮音性を高めていますが、どうしても隣の人の声が入ってしまうことがあります。天井が高いだけで、音は上に抜けやすくなりますから、快適さはずいぶんと変わります」

数多くの物件を見ていく中で出会ったのが、今回入居を決めたオフィスビルだ。中規模サイズでありながら、大規模ビルと同等の機能やデザイン性を兼ね備えていた。そして、 セキュリティがしっかりと確保されており、重厚感がある。今回、同社が契約したフロアはモデルルーム仕様であった点も魅力的だった。什器・家具が最初から全て揃っており、移転後のイメージを具体的に想像できたという。

「オフィスデザインにも、私たちらしさが表れていると思います。実用的かつ自然コミュニケーションが生まれるように設計されています。出社して誰とも話さずに帰るなんてことはまずありません。従業員にも大変好評で、みんなが心地良く過ごせる空間になっていると感じています」

ラウンジやリフレッシュエリアをコミュニケーションの場として有効活用

それでは、新オフィスを紹介していこう。受付には「Techtouch」のロゴが掲げられ、来訪者を迎える。その奥のラウンジには、「社員証」を2人でタッチすると飲み物が無料になる仕組みの自動販売機を導入している。ちょっとした雑談や交流のきっかけとして活用されているようだ。

「今回初めて専用スペースを持ったことで、これまでとは違うオフィスへの愛着が生まれました。初めて自社のロゴマークを掲げられるようにな、自信を持ってお客様を迎え入れられるようになりました」

ラウンジを活用したランチ会や懇親会も定期的に開催しているという。今では、毎週木曜日に採用候補者を招いた「採用ミートアップ」の実施や、従業員が友人を連れてカジュアルに会社を知ってもらう場としても活用されているという。

受付

受付

ラウンジ

ラウンジ

ラウンジ

ラウンジ

次は執務エリアだ。壁際には新たに10台のテレフォンブースの追加と、執務エリア内にも経営ビジョン共有やイベントに対応するリフレッシュスペースも設置。パーテーションで区切ることで自由度の高い使い方が可能だ。

「業務に集中するスペースと、交流の場がしっかり分けられているのがいいですね。可動式パーテーションを使えば、ゲストを招いた規模の大きいイベントの開催ができます。自社オフィスならではの自由度の高さが特徴です」

今後はさらに追加していきたい要素もたくさんあるとのこと。

「例えば、ラウンジでみんなのお知らせを流したり、社内の出来事を共有するスペースをつくったり、設立5周年の際に作成した記念動画を流すのも良いと思っています」

こうした発想の一つひとつからも、働く人を大切にする同社らしい文化が伝わってくる。

執務エリア

執務エリア

テレフォンブース

テレフォンブース

リフレッシュスペース

リフレッシュスペース

出社率が自然と上昇。オフィスが企業文化浸透を後押し

「天井が高く広々とした執務スペースのおかげで、以前よりも快適に働ける環境になりました。特に専用テレフォンブースが増えたことで、オンラインミーティングに対応できないという課題が解消でき、従業員からも好評です。さらに、オフィス内の動線も工夫されていて、ちょっとした休憩の途中に自然と他の部署の従業員と顔を合わせられる。そんな偶発的なコミュニケーションが生まれる点も良い循環を生んでいます」

立地に関しても、当初は「ビジネス街のため飲食店が少ないのでは」と不安視する声もあったようだが、いざ移転してみると徒歩圏内にバラエティ豊かな飲食店が多く、ランチタイムを楽しみにする従業員も少なくないという。こうした居心地の良いオフィス環境が整ったことで、従業員の出社率も自然と上昇している。強制的な出社は求めていない中で予想以上に出社率が上がり、オフィスが手狭になるかもしれないと、嬉しい悲鳴も生まれている状況だ。

井無田氏自身も、オフィスの持つ力を甘く見ていたと語る。

「今回の移転で、オフィスが組織や人に与える影響の大きさを実感しました。特に当社のようなスタートアップ企業では人の出入りが多い環境のため、その力は想像以上でした」

急成長する組織において常に課題となるのが、「新メンバーの早期戦力化」と「企業文化の浸透」。特に後者は抽象度が高く、言葉だけでは伝わりきらないことも多い。オフィスという空間が生む企業文化の浸透は、結果的に離職率の低下にもつながっているという。

「人それぞれ解釈が違うからこそ、直接のコミュニケーションが重要になります。オフィスに集まるからこそ、自然なやりとりを通じて、文化の解像度がぐっと上がる。今までと比較すると、理解度が明らかに変わってきました。確かにオフィスはイニシャルやランニングコストが掛かりますが、それ以上に『オフィスで働くということ』がもたらす価値は大きいと感じています。当社の成長を考えたときに、オフィスは極めて重要なツールだと再認識しています」


テックタッチ株式会社
「全てのユーザーがシステムを使いこなせる世界に」。そんな想いで設立されたテックタッチ株式会社。「テックタッチ」のDAPは、現場部門でも使いやすいUI設計に加え、エンドユーザーごとに異なる課題に寄り添えるコンサル型支援が特徴だ。最近ではデータ戦略AIエージェント「AI central Voice」の提供も始めた。今後も社会のDXを加速させ、より良い未来の実現を目指していく。(テックタッチ株式会社 ホームページ►https://techtouch.jp/)


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