アーバンネット仙台中央ビル

2022年10月取材

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※記載の内容については、現計画段階のものとなりますので、詳細は今後変更となる可能性があります。

仙台市都心部で進行している
賑わいを創出させる再開発プロジェクト

仙台駅前の市街地で進行している大規模再開発「アーバンネット仙台中央ビル」(以下、同PJ)は、仙台市が進める「せんだい都心再構築プロジェクト」の第1号物件である。今回は、開発を担当するNTT都市開発株式会社に取材を行い、開発の背景や概要についてお話をお聞きした。

服部 篤紀 氏

NTT都市開発株式会社
ビル・商業事業本部 法人営業部
営業戦略担当 担当課長

服部 篤紀 氏

中小路 淳一 氏

NTT都市開発株式会社
開発本部 開発推進部
担当課長

中小路 淳一 氏

大野 新 氏

NTT都市開発株式会社
ビル・商業事業本部 法人営業部
営業戦略担当 主査

大野 新 氏

仙台市のセンターエリアで進行する大規模再開発

東北の玄関口であるJR仙台駅。東京駅から東北新幹線で約1時間半と良好なアクセスを誇る。仙台市中心部は、近年では研究開発施設やIT関連企業からも注目されており、ビジネス拠点としての存在感が高まっている。

その仙台駅から徒歩圏のエリアで進行している大規模再開発プロジェクトが「アーバンネット仙台中央ビル」である。竣工は202311月の予定だ。開発所在地は、仙台市青葉区中央。市内の中心部を南北につなぐ「東二番丁通」に面し、利便性が高く緑も豊富なエリアである。

「住所に中央とついているくらいですから市内を代表するエリアの一つであることは間違いありません。周辺には昔からの仙台朝市や仙台銀座があり、来街者が多いエリアです」(中小路氏)

アーバンネット仙台中央ビル(完成イメージ)

アーバンネット仙台中央ビル(完成イメージ)

2019年、仙台市は震災復興の次なるステージをめざすために「せんだい都心再構築プロジェクト」をスタートさせる。同PJは、その第1号物件にあたる。「せんだい都心再構築プロジェクト」は、「東北を牽引するイノベーションが生まれる都心」「東北の交流拠点となる新たな賑わいを創り出す都心」「杜の都の個性が活きる都心」を将来イメージとして掲げている。それらイメージの達成に「老朽建築物の更新・オフィスの供給」「新オフィスへの企業誘致」「地域内への投資促進」を実行していくという。

「仙台市とNTT東日本、NTT都市開発の親会社であるNTTアーバンソリューションズによって『都心部の活性化に関する連携協定』を締結しました。本PJで賑わいとイノベーション創出の拠点となるような各種の取り組みを行い、都心部の更なる活性化につなげていきます」(中小路氏)

「同PJの再開発コンセプトである「『仙台エコシステム』は、同PJと最先端の研究開発施設『次世代放射光施設(NanoTerasu)』や地元の多様な機能をつなげ、連携することで、産業の活性化、起業・創業といった新たなビジネスの創出を促すことを目的とします。そして結果として優秀な人材が首都圏に流出するという地域課題を解決させていきたいと考えています」(服部氏)

「次世代放射光施設(NanoTerasu)とは、ナノレベルで物質を観察できる「放射光」を使った巨大な顕微鏡施設のことです。東北大学青葉山新キャンパスで、現在、建設工事が進められています。その施設を使って、今までにない画期的な研究開発が可能とのことです。ちなみに放射光の明るさは太陽光の10億倍以上といわれています」(大野氏)

「東北大学や一般財団法人光科学イノベーションセンターなど、地元の団体とも協力しながら産業利用の活性化をめざしていきます」(中小路氏)

次世代放射光施設(NanoTerasu)完成写真

次世代放射光施設(NanoTerasu)完成写真 *一般財団法人光科学イノベーションセンター提供

Well-beingなワークスタイルで働く人の生産性と満足度を高める

PJは地下1階地上19階建。地上1階から4階がオフィスサポートフロア、5階から19階がオフィスフロアとなる。オフィスサポートフロアには、ワークスペースだけでなく、「交流」や「共創」「イノベーション」をテーマにした多様な機能を備える。

1階に設けた「イノベーションスペース」は、さまざまな人が交流し、感応しあうことでイノベーションを生み出すことを目的とし、広々とした大空間となる予定だ。同じく1階には「カフェ&オープンスペース」を配置し、地域との回遊性促進や賑わい創出につながるような場となる。

1階イノベーションスペース(本物件イメージ)

1階イノベーションスペース(本物件イメージ)

1階カフェ&オープンスペース(本物件イメージ)

1階カフェ&オープンスペース(本物件イメージ)

2階と3階の一部には「コワーキングスペース」を設け、スタートアップ企業やベンチャー企業、起業をめざす学生や社会人、研究者などが交流可能なプラットフォームを構築する。

3階の一部は、「次世代放射光施設(NanoTerasu)」と連携した「解析室」「宿泊施設」が整備される。「解析室」は、NTTグループの技術力により安心・安全なネットワーク環境で結び、高度な研究をリアルタイムに支援する。

「解析室や宿泊施設は、次世代放射光施設(NanoTerasu)の研究者の夜間や長時間の測定をサポートします」(中小路氏)

2階コワーキングスペース(イメージ LIFORK原宿より)

2階コワーキングスペース(イメージ LIFORK原宿より)

3階には「テナント専用ラウンジ」も用意する。時間や場所にとらわれない、Well-Beingな次世代の働き方を柔軟にサポートすることが目的となる。

「テナント専用ラウンジは、ワークスペースとリフレッシュスペースを兼ね備えた場になります。Well-beingも意識して、多くの植栽や自然光を身近に感じられる設計にします」(服部氏)

3階テナント専用ラウンジ(イメージ LIFORK秋葉原より)

3階テナント専用ラウンジ(イメージ LIFORK秋葉原より)

4階には、NTTグループが持つICTを活用し、起業や産学連携を支援するAIIoTの共同実証環境『スマートイノベーションラボ』を備える。その他、同フロアには「貸会議室」や最大席数約140席の「カンファレンス」も設けるという。

「当社はABWの働き方を推進していることもあり、ビル内の共用部分に色々な機能を取り入れました。ここで働くワーカーの方々の生産性や満足度、スペース効率を高めたいと考えているからです」(大野氏)

5階以上がオフィスフロアとなる。5階~14階が基準階低層階で、1フロア面積は約480坪。コの字型のレイアウトだ。16階~19階が基準階高層階。1フロア面積は約538坪。高層階はロの字型のレイアウトとなる。どちらも整形空間であるため、企業ごとの働き方に合わせた自由なレイアウト設計を可能とする。ちなみに15階の一部には入居テナント専用の防災備蓄倉庫を配置する予定だ。

基準階低層平面図

基準階低層平面図

基準階高層平面図

基準階高層平面図

「仙台都心部でここまでのフロアプレートを持つオフィスビルは希少です。近年増えている拠点の統合ニーズに応えられるものとなります。一方で、分室ニーズにも応えられるように11分割(基準階低層階は12分割)も可能としました。最小分割面積は約29坪。分散拠点の統合、東京などの首都圏に本社を構える企業の新規拠点開設など、さまざまな企業のご要望にお応えいたします」(服部氏)

フロア内は、天井高2,800mm、電気容量60VA/㎡、床荷重500/㎡、OAフロア100mm、グリッド式システム天井を装備するほか、1フロア34ゾーンの完全個別空調を用意。また、多様性への取り組みとして、各階にオールジェンダートイレを設置する。

災害時を見据えたBCPと地球環境への取り組み

災害時を見据えたBCPも万全だ。免震構造を採用し、地震の揺れを大幅に低減する。

「地下1階の柱頭部に設置した免震装置が、地震エネルギーを吸収し建物の被害を最小限に抑えます。災害時を見据え、事業継続性と安心安全を確保するのが目的ですから、ビルだけではなく駐車場も含めた範囲で免震装置を設けました」(服部氏)

「過去の災害で、『駐車場から車が出せなくなった』という事態が発生しました。今回はその過去の教訓を活かしました。免震層の上に機械式駐車場があるオフィスビルは、仙台市内でも滅多にありません」(大野氏)

建物安全度判定サポートシステムも導入する。各階に設置された加速度センサーでビル全体の安全度を自動で判定し、被災状況を直ちに把握する仕組みだ。電源供給は高圧2回線受電方式を採用。本線で事故があったとしても予備線での受電を継続する。万が一、用意した2系統の電源線が停止した場合も想定して、非常用発電設機からの電源供給も可能とする。

「各階貸室に対し最大72時間の運転が可能です。オプション対応にはなりますが、テナント専用の発電機を設置するスペースも確保しています」(服部氏)

非常用の給水対策としては、約3日分の雑用水の貯蔵タンクの整備、テナント用の防災備蓄倉庫の提供などで一定数の帰宅困難者を守る。

その他、オフィスエリアではエネルギー消費量の50%以上の削減をめざすという。

ZEB Ready認証や建築物の環境性能評価であるCASBEE Sランクを取得する予定です。再生可能エネルギーへの取り組みで環境負荷の低減に貢献したいと思います」(大野氏)

他にも、緑化計画の促進、駐車しながら充電が可能な電気自動車用充電器の設置、LED照明の全面採用、自然光に応じた照明光量の制御システムの導入、Low-E複層ガラスの採用による熱エネルギーの保持など、多面的に環境経営を支援する。

今までにない次世代ビルの開発で仙台市全体の活性化を促進していく

PJ竣工後の街づくりを通じた地域の活性化も重要な課題の一つと捉えている。

「仙台市とも積極的に連携を取り合いながら、仙台都心部のさらなる活性化に向けて、高機能なオフィスビル、街の賑わい創出に貢献する低層部を通じて、周辺地域のさらなる活性化と魅力ある街づくりを進めてまいります」(中小路氏)

「ビル内だけではなく、エントランス前に設けたオープンスペースも上手く使いながら街全体の回遊性を高めていきたいですね。例えば、キッチンカーの出店などもいいかもしれません。そんな来街者や市民にとって役立てるような仕掛けやイベントを実行していければと思っています。当ビルは交通量や人通りが多い『東二番丁通』に面しています。その立地の利点を活かした効果的な情報発信が重要だと考えています」(大野氏)

「古くからの商店街である『仙台銀座』や『仙台朝市』の皆様とも連携できるイベントを検討中です。そうした近隣エリアの皆様との交流を促進しながら、賑わいと回遊性を創出していきます。それが仙台市全体の価値を高めていくものだと信じています」(服部氏)

ビル低層外観(本物件イメージ)

ビル低層外観(本物件イメージ)

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