- 2007年からオフィス改革ソリューションを始動。コンセプトは「EmpoweredOffice」
- あらゆる" 壁" を越えて人と情報をつなぐ。それがワークスタイル改革の考え方
- 以前のオフィス改革をベースにして進化させたオフィスづくりを行なった
- 働き方によって場を変化させる機能満載の新オフィス
- 定期的に満足度調査を実施。その結果を次のオフィス改革に活かしていく
2007年からオフィス改革ソリューションを始動。
コンセプトは「EmpoweredOffice」
情報通信システムに関する企画・コンサルティング、設計・構築をサポートするNECネッツエスアイ。ICT業界の最大手で国内約400カ所の拠点を持つ。音声通信網の設置工事から始まり、企業、キャリア、官庁・自治体と幅広いお客様へネットワークシステムの構築そしてIT領域を含むICT(情報通信技術)全般への事業領域を拡大してきた。
2007年にオフィス改革ソリューション「EmpoweredOffice」を立ち上げる。その目的は多くのお客様に対してICTとオフィス機能を組み合わせた次世代の働き方の提案にあった。
「それ以前は内線電話やテレビ会議システムのような音声サービスの分野でのシステム構築が事業の主体でした。ところが日本経済の安定に合わせてオフィス全体のネットワークシステムを提案して欲しいとの要望が増えてきます。それならば幅広い情報通信サービスをワンストップで提供しようと。そうして『移転ソリューション』というキーワードを用いて働き方を提案することにしたのです」(湯江明史氏)
しかしそう簡単に理解されるものではない。そこで当社に来られた方が自然の流れの中で体感でき、そのまま提案に繋がるようなオフィスを構築することとした。オフィスコンセプトは『EmpoweredOffice』。「働く人や事業拡大のために機能を備えたオフィス」という同社の意思が込められている。
「そのような取り組みを開始したのが、東品川の旧本社オフィスです。まずは営業部門とSEの一部を配置した2フロアからトライアルしました。ちょうど2007年にSECIモデル(注1)が発表されたこともあり、それを元にどのような働き方がベストなのかを考えながらのチャレンジでした」(鈴木聰子氏)
東品川オフィスは、翌年に同社として初めてとなる日経ニューオフィス賞を受賞する。それ以降、オフィス改革は全社的な課題として共有。その後支社・支店含め日経ニューオフィス賞を8回受賞することになる。
「もちろん受賞は喜ばしいことですが目的はそこではありません。賞にエントリーする行為自体が有意義なことなのです。何しろそこに至るまでの考えや課題を振り返り、さらに再認識することができるのですから」(湯江氏)
(注1)SECIモデル
知識の共有や活用によって知識創造がどのように生み出されているかを、一橋大学院の野中郁次郎教授が発表したプロセスモデル。全ての知は、個々の体験に基づく暗黙知にあるという考え方。
あらゆる" 壁" を越えて人と情報をつなぐ。それがワークスタイル改革の考え方
それでは2007年の東品川オフィスでの取り組みについて紹介しよう。大きく4つの提案から構成されている。
1.人と情報が交わる場をつくる(創造性を高める働き方)
- ワークスタイルの変革(社内調整型 ⇒ コラボレーション型)
(関係者全員で課題を共有し、解決に導く) - 創造行動を促進させる空間(偶然の出会いによる知の交流)
2.知的にぎわいの促進
- 外部との相互交流による課題解決の場
- アクティブアバター(仮想空間上の分身)による交流促進
3.社員のモチベーションを高めるしくみ
- クリエイティブな働き方を自覚させるSECIモデルボード
- 見える会議室
- デジタルサイネージを使った省エネの見える化
- 先進的な技術環境を備えた技術者育成ゾーン(NGN Labo)
4.ICT環境の活用
- 映像垂直投影デスク
- 電子黒板
- 全館無線LAN
- 高画質モニタによるテレビ会議室
「オフィスの中に視界を遮るものをできるだけつくらない。会議室のあり方を考え直す。この2点をオフィス改革の中核としました。慢性的に会議室の数が足りないという現状をいかに打開できるか。そのためには働く環境を劇的に変える必要がありました」(湯江氏)
「当然、賃貸オフィスには常にコストがかかっています。スペース効率をどれだけ改善できるか。会議室は閉ざされた空間でなくてはいけないのか。オープンならば誰でも気軽に参加できるのではないだろうか。それが積極的なコミュニケーションに繋がるのではないか。そんなことを一つひとつ検証していきました」(鈴木氏)
以前のオフィス改革をベースにして進化させたオフィスづくりを行なった
慣れ親しんだ東品川のオフィスではあったが、経営課題を解決するために本社移転を検討することになる。経営課題は以下の3つであった。
- 統合によるオフィスコストの削減(フロア30%削減目標)
- トップライン拡大に向けた営業力の強化(全社プロセスの改革)
- BCPの強化(大規模災害時の事業継続性確保)
「当時、東京には東品川と芝浦の2拠点がありました。分散したオフィスを一つに統合することで業務効率は間違いなく良くなりますし、面積の削減も可能になります。また両拠点ともにすぐに営業アクションを取りやすい場所とはいえませんでした。加えて、入居ビルの老朽化への懸念とともに、隣に運河が流れる埋立地でしたのでBCPの観点からも立地の再検討は命題となっていました」(鈴木氏)
東品川ではSECIモデルを元にした創造性を高める働き方にチャレンジしたが、飯田橋への移転はリーマンショック後の時代背景もあり、より効率性を追求する改革となった。
「経営陣からはランニングコストの削減を求められていたため、大幅な面積の縮小を実現しなければなりません。そこで削減メリットを最大限発揮できるようにワンフロア面積の大きなビルを移転先への条件の一つとしました。次に、営業力の強化という点ですが、当社のお客様は大手町や日本橋の金融関係や新宿の通信関係が多い。となると、お客様のもとに迅速に動ける立地、かつ複数の路線や駅を使用できるエリアであることが条件となりました。そしてBCPの強化を考えると耐震性が強固で非常用電源が備えられているビルであること。これらの条件で絞込みを行い、最終的に今のビルに決めました」(湯江氏)
決算前ということもあり本社移転計画は社内でさえオープンにされていなかった。5月にようやく発表。社内に対しても具体的な内容が正式にアナウンスされた。
「移転目的の一つである面積のスリム化。そのため一人当たりの面積を縮小します。しかし単に削減するだけでなく、そこから生まれたスペースをコミュニケーションエリアに割り当てることにしました。その施策を実現させるために導入したのがほとんどの部門を対象にしたフリーアドレスです」(鈴木氏)
「2008年のオフィス改革で導入したフリーアドレスの効果が確認できていましたので、全部門に広げても問題はないと判断しました」(湯江氏)
「3,000名の大移動になりますので、ある程度の管理は必要になります。そこで最初に事務局で『EmpoweredOffice』の考えに基づく改革ガイドラインを作成しました。それを一旦、各部門の移転リーダーに。そこを経由して一般社員に伝えるようにしました。そのように段階的に浸透させることで大きな混乱を招くことを防いだのです」(鈴木氏)
移転プロジェクトは総務部門が全体を、ファシリティ部門が現場を管理する。それに『EmpoweredOffice』を推進する部門として当本部が携わる。「移転事務局は3つの部門で編成しました。そして移転事務局を起点とし、各部門から選出された30名超の移転プロジェクトメンバーと日々連携を取り合って進めていきました」(鈴木氏)