2019年のオフィス移転事例を振り返る

2019年のオフィス移転事例を振り返る

2019年1月~12月掲載

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィス移転事例に見る最新オフィストレンド

2019年に働き方改革関連法案の一部が施行された。しかし多くの企業からは何から始めていいのかわからないといった声も聞かれる。その結果、労働時間の短縮、就業ルールの見直しなどを始めたものの、本来の目的である労働生産性の向上まで至っていないというのが実情だ。

近年は、生産性向上のために「オフィスの改善」を検討する企業も少なくない。そこで2019年に掲載した「オフィス移転事例」を振り返り、企業が抱える課題や改善施策、それによって生産性にどのように影響があったかを考えてみる。

はやわかりメモ
  1. スペース不足を課題としたオフィス移転
  2. スペース効率を求めたオフィス移転
  3. 新拠点の新設で新たな働き方に挑戦する
  4. リニューアルによって働き方を改善した

スペース不足を課題としたオフィス移転

2019年に掲載した「先進オフィス事例」は19事例。
業種は、サービス業6事例、製造・販売業5事例、情報通信・IT系企業4事例、専門・コンサルタント業3事例(2社)、金融業1事例。それら企業の多くが「オフィスの手狭さ」を課題としていた。業務拡大の中で採用計画を行うことで執務スペースが不足する。その場合の一時的な処置として応接室やミーティングルームを執務室として充当するケースが多く、必然的にミーティングの回数も減り業務効率が下がってしまう。

SI事業・コンサルティング事業、ソフトウエアプロダクト事業の3つの柱を通じて多くの企業に付加価値を提供している「プライマル株式会社」は、設立後、数回のオフィス移転を行ってきた。今回も組織の成長による「手狭感」を理由にオフィス移転を実施した。旧オフィスでは来客用応接室が常に予約で一杯に。その他社内用ミーティングの向上を考え、新オフィスコンセプトを「コミュニケーションの活性化」とし、新たにオープンオフィスを構築する。「見える化」を推進し、社内の風通しが良くなり、今まで以上にコミュニケーションが増えているという。
プライマル株式会社:カウンター席
プライマル株式会社:カウンター席

複数の再生可能エネルギーを利用した発電所の開発・運営を行う「株式会社レノバ」もオフィスの「手狭さ」を課題としていた。ただし移転によって働く環境を劣化させるわけにはいかない。そこで移転先の条件には「交通の利便性」「ビルスペックの充実」「安全性の確保」を設定した。
新オフィスでは、対外的と社内的の2つのコンセプトをバランスよく共存。多様なワークシーンに応じて使える空間を提供してコミュニケーションやコラボレーションが活発になる仕掛けを構築した。その結果、業務の生産性向上を実感しているという。
株式会社レノバ:リフレッシュスペース
株式会社レノバ:リフレッシュスペース

株式会社スタディスト」も働く環境の改善を行った。同社の業務は、ビジュアルSOPマネジメント・プラットフォーム「Teachme Biz」の開発・販売。簡単に伝えることを目的にしている商品だけに、新オフィスにも「知る、考える、作り出す喜び」を感じる機能を重視させた。オフィスコンセプトは「相互刺激」と「マルチワークプレイス」。エントランス横に機密性を必要としないフリースペースを用意した。最も特長的な試みはオフィスの中央に「ソロワークスペース」と「コワーキングスペース」を設置したこと。働く場所を選ばない環境を実現している。
株式会社スタディスト:オープンミーティングスペース
株式会社スタディスト:オープンミーティングスペース

株式会社リジョブ:桜の咲く公園
株式会社リジョブ:桜の咲く公園
美容・ヘルスケア業界に特化した求人サイトの企画・運営を行っている「株式会社リジョブ」も執務スペースや打ち合わせスペース不足を理由に移転を行った。新オフィス全体のコンセプトは「REJOB PARK」。同社のシンボルとしていた「桜の咲く公園」の広さや機能をレベルアップさせるなど、旧オフィスをさらに進化させたオフィスを構築している。その他、コミュニケーションの向上を目的とした「SAKURA LOUNGE」「さくらBar」「SAKURA CAFE」などの新たな機能を設けた。加えてソロワーク用の集中スペースも大幅に増設。「働き方」そのものを進化させている。

株式会社フォトシンス:オープンスペース
株式会社フォトシンス:オープンスペース
IoTとクラウドを活用した「Akerun入退室管理システム」の開発・提供を行っている「株式会社フォトシンス」。新オフィスのテーマは社名のベースにもなっている「光合成」。オフィス全体を1枚の葉っぱに見立てた。その第1のポイントは「日照量」。社員の健康を考えて自然光を取り入れられる物件探しを行った。第2のポイントは「細胞壁(セル)」。会議室や個室は細胞壁を意識させ、あえて不規則な構造とした。第3のポイントは「細胞内循環」。オフィスを葉っぱに例え、働く人は水や養分にあたると考え、活発に人が行き来できる設計とした。

イグナイトアイ株式会社:コミュニケーションエリア
イグナイトアイ株式会社:コミュニケーションエリア
採用管理システム「SONAR(ソナー)」などのHRtechサービスを提供している「イグナイトアイ株式会社」。今後の増員計画を考え、「固定席+会議室」といった従来のオフィスレイアウトでは柔軟な収容が難しいとし、自由度の高いABWのワークプレイスを採用した。セキュリティエリアである執務スペース内には、アクティビティごとに、「高集中エリア」「コミュニケーションエリア」「1on1ブース」「電話ブース」で構成している。オフィスコンセプトは「ナチュラル&インダストリアル」。自然と人工的で無機質なイメージをバランスよく組み合わせた。

株式会社ディライトテクノロジー:会議室エリア内のソロスペース
株式会社ディライトテクノロジー:会議室エリア内のソロスペース
ソフトウエア開発を中心にクラウドシステムやサーバの構築、システム設計、ITコンサルティング全般を展開している「株式会社ディライトテクノロジー」。同社の移転理由も、オフィスの「手狭」。そしてその影響による会議室不足だった。新オフィスのコンセプトは「シンプル」「機能性」「無駄を省く」。旧オフィスで課題だった会議室は、そのコンセプトに基づいて大きく改善された。部屋型に合わせて執務エリアと会議室エリアを分離させ、会議室エリアの中央には広めのオープンスペースを構築。それによって遮音性を保ちながら圧迫感を感じさせないエリアを実現した。

スペース効率を求めたオフィス移転


エンターテイントメント企業のバンダイナムコグループが、ハイターゲット向けの部門を統合させて誕生した「
株式会社BANDAI SPIRITS」。新会社設立後は数拠点に分散したまま業務を行っていたが、拠点間との移動にかかる時間やコストを見直し、業務全体の効率化を図った。オフィスデザインのテーマは「基地」。エントランス扉はプロジェクションマッピングで近未来的な映像を投影。全てのお客様に感動を与えることを目指した。扉を抜けると自由に使用できるオープンスペース。宇宙船の内部をイメージさせたクローズの応接室も15室用意した。

株式会社BANDAI SPIRITS:会議フロアエントランス扉
株式会社BANDAI SPIRITS:会議フロアエントランス扉

オルタナティブ投資で躍進を続けている「三菱商事アセットマネジメント株式会社」。金融業という性質からセキュリティ面の強化が問われていた。加えて非効率なオフィス形状によるコミュニケーション不足という課題解決のためにオフィス移転を行った。オフィスコンセプトは「Simple and Solid」。執務室は「Front Office」と「Back Office」の2つの島に。島の間にはマグネット効果を生み出すためのミーティング兼作業スペースを配置。その他、オープンスペース、ソロワーク席、ファミレス風スペース、ドリンクカウンターを配し、コミュニケーションを促進させている。
三菱商事アセットマネジメント株式会社:ファミレス風スペース
三菱商事アセットマネジメント株式会社:ファミレス風スペース

総合人材サービスグループを全国展開している「パーソルホールディングス株式会社」。あえて分散させることでBCP対応やファシリティコストの最適化を行っていたが、中長期経営計画の加速化を考え、オフィスの集約を行った。分散していた各オフィスを統合。新会社の設立も重なり、オフィスビルの全フロアを借りた。これを機に、グループ内のダイバーシティの強化も推進した。新オフィスのコンセプトは「知の融合」。フロアごとに機能を変えたことが新オフィス最大の特長となる。2階フロアにカフェやダイニングを設けるなど、コミュニケーションスペースを充実させた。
パーソルホールディングス株式会社:4階 オープンイノベーション
パーソルホールディングス株式会社:4階 オープンイノベーション

コンテンツの電子化や配信サービスの運営を行っている「株式会社イーブックイニシアティブジャパン」は分散フロアの集約を目的に移転を行った。移転を機に目指したのは、気軽に他部署同士がディスカッションできる場の創出。コンセプトを事業内容である「マンガを具現化させるオフィス」として、課題解決のための機能を加えていく。初めてフリーアドレスを採用。自分の業務にあった場所や時間の使い方をすることで、新たな発見が生まれることが多くなっているという。
株式会社イーブックイニシアティブジャパン:オープンエリア
株式会社イーブックイニシアティブジャパン:オープンエリア

新拠点の新設で新たな働き方に挑戦する


アイリスグループ:Touch Down Area
アイリスグループ:Touch Down Area

生活用品の企画・製造・販売を中心に事業展開を続けている「アイリスグループ」は、創業60年事業の一環で東京本部を新設した。同グループが最重要事業と位置づけているLED照明・家電の研究開発拠点および法人営業拠点の機能を持たせ、より働きやすい環境を構築した。単にフリースペースを配置するだけではただの自由席になってしまう。そこで個々の業務の特性に適したワークプレイスを自由に選び、オフィス内を移動しながら業務を行う「ABW」が会社の方針であることを明確にした。移転後は、部署を横断したコミュニケーションが活発になっているという。

アビームコンサルティング株式会社:タッチダウンエリア「アトランティックオーシャン」
アビームコンサルティング株式会社:タッチダウンエリア「アトランティックオーシャン」
お客様の企業変革実現の挑戦を支援するグローバルコンサルティングファーム「アビームコンサルティング株式会社」は、課題となっていた「研修センターの新設」と「新しい働き方の場」としての機能をマッチングさせて新施設を開設した。常に新しいことを切り開いて世界で躍進する同社のイメージに合わせて、デザインコンセプトを「OCEAN NAVIGATION」に。世界5大陸をイメージした研修ルームと2ヵ所のタッチダウンエリアを新設。同エリアは、同社が推進している「Free Location制度」を後押しできるものと考えているという。

株式会社ACCESS:通路側オープンスペース
株式会社ACCESS:通路側オープンスペース
IoT時代の到来を見据えて「全てのモノをネットにつなぐ」を実現している「株式会社ACCESS」。本社オフィスの近隣地と干葉市に開発拠点を分散していたが、本社とのアクセス、コミュニケーション、管理コストといったデメリットが表面化し、2拠点の統合を実施した。移転コンセプトは「快適性と集中力を高める空間で生産性向上を実現する」。今までなかった集中スペースやリフレッシュスペースを新設した。さらに多くのオープンスペースを配置。執務室を取り囲むようにレイアウトを構築し、従業員のモチベーションやコミュニケーションを向上させている。

株式会社スノーピーク:オープンなミーティングエリア
株式会社スノーピーク:オープンなミーティングエリア
日本発のアウトドア総合メーカーとして知られる「株式会社スノーピーク」。本社は創業以来、新潟県三条市に構えている。同社はアパレル、住宅、オフィス、地方創生といった非キャンパー向けの新たな事業を展開しているが、この度、情報発信拠点として新たに東京オフィスを新設した。拠点新設にあたり、単なるオフィス機能だけではなく同社の世界観を体現できるスペースの構築も必要と考えた。そこでエントランスを含めたオープンスペースにはショールームの機能も持たせ、多くの企業に新たな働き方の提案を行っている。

株式会社 SEB Professional:機能を備えたWMFショールーム
株式会社 SEB Professional:機能を備えたWMFショールーム
業務用コーヒーマシンの製造・開発・販売で業界トップクラスのシェアを誇ってきた「WMF」。調理器具ブランドとの経営統合により「株式会社SEB Professional」として新たな企業ブランディングをつくる必要があった。新オフィスのコンセプトは「明るくて、コミュニケーションが促進される今どきのオフィス」。新設したブランドごとのショールームは、社内会議や社外応接としての機能も持たせている。オープンエリア内には応接、執務室エリアにはリフレッシュスペースを配置。打ち合わせを頻繁に行える環境を整備した。

リニューアルによって働き方を改善した


ゲーム事業を主軸にエンターテインメント事業を展開している「グリー株式会社」は、オフィスの全面リニューアルを実施した。オフィスコンセプトは「グリーのモノづくりを発信する」。最も変化を見せたのが12階の来客用フロアとなる。エントランスから外周の半分超をオープンエリアとし、「エントランス」「ラウンジ」「カフェ」「フューチャーラボ」「セミナールーム」と多様な機能を配置した。今回のリニューアルでは、ワーカーの行動データをオフィスづくりに活用。ワーカーがベストパフォーマンスを発揮できるオフィスを目指した。

グリー株式会社:ラウンジ
グリー株式会社:ラウンジ

Eコマースを主力業務として幅広い事業展開を行っている「BEENOS株式会社」は、スペース不足の改善やコミュニケーション向上のために大規模リニューアルを実施した。設計コンセプトは同社の文化でもある「オープントーク」。ミーティングスポットを大幅に増やし、その分個室の会議室を減らした。かつてのベンダーとの商談場所は広々としたラウンジに改修。偶発的なコミュニケーションを生み出している。同社の考える「働き方改革」は残業の一律禁止ではない。残業ができる環境と早く帰れる仕組みの両立。今後も自主性を考えた働き方の提案をしていく。
BEENOS株式会社:ラウンジオープン席
BEENOS株式会社:ラウンジオープン席

先に紹介した「株式会社レノバ」はオフィス移転完了直後から増床計画をスタートさせていた。プロジェクトを進めるにあたり、①多様な働き方の推進②コラボレーションの促進③社員の自立的成長の支援をコンセプトとした。検討を重なる中で、フリーアドレスの導入、コワーキングスペースの拡大、マグネット機能を持つコミュニケーションスペースの設置が実施される。コワーキングスペースは増床フロアに配し、会議室、ファミレスブース、ソロワーク席などで構成。将来的な組織体制の変更に対応できる自由度の高い設計となっている。
株式会社レノバ:コワーキングスペース
株式会社レノバ:コワーキングスペース



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