vol.2 昇進試験・資格試験、普段の仕事に!確実に記憶する技術

vol.2 ~昇進試験・資格試験、普段の仕事に! 確実に記憶する技術~

学生時代に比べて試験の機会は減ったとはいえ、それでも昇進や資格にまつわる試験、スキルアップのためのTOEIC、日々の仕事のアレコレなど"記憶する"場面はたくさんあるのが社会人。

限られた時間の中で効率よく記憶するポイントを、心理学の観点からご紹介しましょう。今日からオフィスで活かせるワザがいっぱいです!

<今月の4コマ>
※このまんがはフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。

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1時間経てば半分忘れる!記憶はなくなりやすいもの

ドイツの心理学者、エビングハウスの実験によれば、無意味なつづりの単語を覚えたとき、1時間後には56%を忘れてしまうのだそう。人類、覚えてなさすぎだろう!というものですが、自分の記憶力のなさを嘆く人は少なくありません。そのためか、心理学でも効率よく記憶するためのさまざまな研究がなされています。

たとえばアメリカの心理学者、ケネス・ヒグビーは7つの記憶の原理を提唱しています。

原理 記憶のポイント
有意味化 意味がないものは覚えにくい。たとえば「一男」という名前を覚えるときに「長男だから一男」と覚えるなど、言葉のなりたちや背景などを知って意味づけをすると覚えやすくなる。
組織化 バラバラな知識は覚えにくい。人物名なら年代や国ごとにまとめるなど対象を整理して系統立てて考えると良い。
連想 すでに持っている知識と新しいものを組み合わせて覚えると効果的。
視覚化 視覚的なイメージは記憶に残りやすいという特徴がある。覚えたいことを頭の中で映像にしてみると良い。語呂合わせもこれに近い。
注意 覚えたいことには注意を向けないと覚えられない。重要なことはアンダーラインを引いたり「このワードは全部覚える」など注意を向けること。
興味 好きなことはよく覚えられるという特徴がある。できるだけ興味を持つと効率良く覚えられる。
フィードバック 覚えたことを復習すると記憶しやすい。よって「何度も書いて覚える」のは効果的。覚えていたことを褒められるのも記憶に残る。

普段から無意識で実行している人も多そうですが、実用書などで「わかりやすい」「明解」といった言葉がタイトルについている本はたいていこうしたポイントがおさえられています。気合い任せにするよりも、まずは対象をどうとらえるかが大切と言えるでしょう。初心者用の本でザックリと把握してからより詳しく覚えていくのも効果的です。

寝ないと覚えられない!記憶のしくみ

学生時代、試験前日に徹夜をしたことがある人は少なくないでしょう。ギリギリまで頑張って知識を詰め込みたい! という気持ちは素晴らしいものですが、記憶をしっかりと定着させるためには睡眠が必要であることがわかっています。

というのも、脳は寝ている間に情報を整理し、重要だと判断した事柄はしっかり記憶に定着させ、また思い出しやすくなるように整理するという働きがあります。ネットで検索をするときも、ネット上にたくさんの情報が集積されているとはいえ、まったく手がかりがないと知りたいことを見つけられません。寝ていない脳はそれと同じ。しっかりと眠ることで、試験本番もスラスラと記憶が引き出せるというわけです。

また、睡眠不足の状態では思考力も散漫に。ギリギリまで頑張るというより、余計にオフィスでのパフォーマンスが下がるので注意しましょう。

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「書いて覚える」「朗読して覚える」は効果的

学生時代に英単語を何回も書いて覚えたり、ブツブツとつぶやきながら覚えたりしたことはないでしょうか。単純ですが、これはとても良い方法です。たとえば教科書やテキストを黙読する場合、脳は視覚による刺激しか受けません。これを紙に書いたり、朗読したりすれば触覚や聴覚も刺激することにつながり、それだけ脳がよく働いて記憶しやすくなるという仕組みです。

何度も書くという方法は「反復」も記憶しやすくなるポイントです。このとき、一つのことを何度も繰り返すよりも、複数のものをまとめてセットにして繰り返したほうが記憶に残りやすいとされています。たとえば「shareholder」「subsidiary」「statements」「capital」という4つの単語を覚えたいとき、「shareholder」を10回、「subsidiary」を10回......と順に書いていくよりは「shareholder,subsidiary,statements,capital」というまとまりを10回書いて覚えたほうが、反復学習の効果は上がります。

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ちなみに「トシをとると物忘れが多くなる」というのはある程度防ぐことは十分可能です。常に新しい刺激をインプットして脳を鍛えておけば、細胞同士の連絡回路というのは発達し続けます。「トシだから?」などと言わず、覚えたり思い出したりするようにしましょう。

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監修:赤木麻里

フリーライター。学習院大学文学部日本語日本文学科、東京福祉大学心理学部卒。
書籍やウェブサイトを中心に幅広く執筆を行う中で、特に思想、哲学、心理学の分野で多数の執筆協力、コンテンツ提供を行っている。

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