vol.11 成果を出す!やる気をアップする!褒め方の極意

vol.11 ~成果を出す!やる気をアップする! 褒め方の極意~

「褒めて伸びるタイプ」「厳しくして伸びるタイプ」などと言われるように、部下や後輩をどう育てるかというのは仕事をする上で大きな課題です。

昭和のニオイがする根性論や飲みニュケーションでは人材が育たない時代ですが、心理学の観点からいえば褒めることが得策といえそうです。

<今月の4コマ>
※このまんがはフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。

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人は褒められたほうが成果を出せる

1925年、アメリカの心理学者エリザベス・ハーロックが「人は叱責された場合よりも褒められた場合のほうが、やる気や成果を出しやすい」ということを実験によって明らかにしました。子どもたちを3つのグループに分けて計算をさせ、グループごとに「成績に関係なく褒める」「成績に関係なく叱る」「褒めたり叱ったりせず放任する」と接し方を変えてみたそうです。

結果、成績がめきめきと上がっていったのは「成績に関係なく褒める」の子どもたちでした。叱責を受けたグループの子どもたちも最初は成績が上がっていったものの、途中から低下していきました。褒めたり叱ったりせず放任していた子どもたちの成績には、変化は見られなかったといいます。叱ることで伸びることもあるとはいえ、仕事は勉強と同じく長期間かけて取り組むもの。「褒めて伸ばす」のほうが効果的と言えるでしょう。

褒めることは、期待をかけることでもあります。マネジメントを行う上司が「このメンバーは高い目標を達成できるだろう」と期待をかけることでメンバーが伸びることは、心理学的に「ピグマリオン効果」という名前で呼ばれています。ただ心のなかで期待しているだけではもちろんダメで、きちんとメンバーに説明する、伝えるといったことは必須なのですが、これも「叱る」ばかりではなし得ないこと。「褒める」ことで上司の期待に応えよう、という気持ちも生まれるというものです。

褒めるときには「努力」を褒めるのがカギ

さて、いざ褒めようとしても、適切に褒めるというのはなかなか難しいもの。「元気がいいね」では小学生みたいだし、「遅くまで頑張っているね」では残業を責めているように聞こえるかも。かといって手放しになんでもかんでも褒めるのは相手を付け上がらせてしまうかも......と迷い始めると、なかなか良い具合に褒められないという人も多いのではないでしょうか。

何を褒めるのが適切か、というテーマについては、アメリカの心理学者キャロル・ドゥエックが解答を示しています。ドゥエックによれば、褒めるときはその人の能力ではなく、努力を褒めるのが正解とのこと。この場合、「能力を褒める」というのは「頭がいいね」「才能があるね」といった褒め方をすること、「努力を褒める」というのは「よく頑張ったね」「プレゼン、よくまとまっていたね」といった褒め方をすることです。

どちらも褒められた瞬間は嬉しい気持ちがしそうなものですが、より難しい課題にチャレンジしようと考えたり、その後も良い成果を出していけたりするのは「努力を褒める」ほうだったのです。能力を褒めた場合は、できそうな課題にしか挑戦しなくなったり、できなかったときに自信を失ったりしやすかったのだそう。ちなみに、褒めるときは「その場で褒める」のも大きなポイントです。

努力を褒めるためには、部下や後輩がどんな取り組み方をしているのか、普段から見ておく必要があります。そうしたい意味でも、上司もきちんと自覚を持って部下にコミットしていくことになるでしょう。それは期待にもつながり、ピグマリオン効果など良い影響をもたらすことにもつながります。

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上司に喜ばれる「ちょい褒め」テク

本コラムをご覧になっている方の中には、上司を褒めたりおだてたりしたいと思っている人も多いことでしょう。この場合、心理学的に正しいコツを2つ、ご紹介しましょう。

ひとつは「具体的に褒める」ということ。「部長のプレゼンすごいですね!」よりも「部長のさっきのプレゼン、後半15分の話の運びがとても勉強になりました。マネしたいです」と具体的に話したほうが、相手を喜ばせることにつながります。

また「自我関与が強いことを褒める」のも良いポイントです。自我関与が強いというのは、こだわっているもの、ハマっているものなどを指します。洒落者の上司ならスーツやタイ、ステーショナリーなど「褒めてほしそうなこと」を狙いましょう。ハマっているものであれば、燻製やそば打ち、スポーツなどいろいろあることでしょう。「今度君もやるか?」なんて話が飛び火するくらいになったら、褒め方が上達したと思ってもいいかもしれません。......かわすのも大変そうですが。

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褒めることが大事とはいっても、ときには叱る必要もあるでしょう。厳しく言われることで、ゆるんだ気持ちをグッと引き締めて意欲的に仕事に取り組めることもあります。そんなときは、人格否定や能力否定は禁物。あくまで努力の部分を叱ると同時に、伝達不足や情報不足など、自分にも非がないかどうか振り返ると、効果的な叱り方ができるでしょう。

監修:赤木麻里

フリーライター。学習院大学文学部日本語日本文学科、東京福祉大学心理学部卒。
書籍やウェブサイトを中心に幅広く執筆を行う中で、特に思想、哲学、心理学の分野で多数の執筆協力、コンテンツ提供を行っている。

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