vol.12 ~心理学的に正しいストレスの乗り切り方~
ストレスは溜め込みすぎてはいけない。誰もがそう理解してはいても、日々仕事をしていれば知らず知らずのうちにストレスフルになっていることもあります。責任や期限、ノルマがある以上、ストレスと無縁でいることできませんから、どう対処するかが重要になってきます。
今回は、良いストレス回避法をご紹介しましょう。
<今月の4コマ>
※このまんがはフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。
ストレスにどう対処するか
仕事に追われている、合わない人がいる......ストレスの原因はさまざまだと思いますが、実際にそれを感じたとき、どんなふうにそれと付き合っているでしょうか。
最もやってはいけないのが、一人でくよくよと悩みについて反芻し続けること。反省することは大切ですが、自分を責めても何も発展しないばかりか、どんどんストレスが高まっていくことにもなります。
ストレスへの対処法や努力は心理学で「コーピング」と呼ばれますが、大きく分けて「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」の2つがあります。前者は問題解決を試みることによりストレスの原因そのものを変化させること、後者は気晴らしなどで不快な気持ちをコントロールすることです。どんなコーピングが良いかは、ストレスの原因や性格によっても異なります。
ラザルスの「8つのコーピング」
現代のストレス理論を確立したアメリカの心理学者、リチャード・ラザルスは8つのストレスコーピングの「型」を提案しています。
①計画型
よく考え、計画を立てて問題解決に向かったり、いろいろな解決法を試してみたりするやりかたです。
②対決型
ストレスを感じる状況を変えるために積極的に努力する方法です。ダメ元で問題や相手にぶつかってみるのもこのやりかたに分類されます。
③社会的支援模索型
問題を解決するため、まわりの人や相談できる窓口などに援助を求めるやりかたです。
④責任受容型
自分がしたことを自覚し、反省するやりかたです。迷惑をかけた相手に謝罪することも含まれます。
⑤自己コントロール型
自分の感情や行動を慎重にコントロールし、他人に見せないやりかたです。
⑥逃避型
問題を忘れようとお酒を飲んだり、逃げたいと考えたりするやりかたです。人に当たり散らしたり、問題を他人のせいにしたりすることもここに含まれます。
⑦隔離型
「この問題は自分とは関係ない」「忘れてしまおう」といったように、起きたことと自分を切り離そうとするやりかたです。
⑧肯定的再評価型
「これを解決すれば学びがある」「このトラブルをきっかけに自分の悪いところを改めよう」などと、経験から自分を発見したり、自己改革を行ったりすることです。
これらはどれが良い・悪いといったものではなく、順番にやっていけばOK!というものでもありません。とはいえ⑥の逃避型は、ときどきなら良いのでしょうが、頻繁に使っていれば人間関係を壊したり、体の不調を招いたりするかもしれません。⑤の自己コントロール型も、毎回では大変です。そのときどきのストレスに合わせて、柔軟に使っていくことが大切です。自分に合った方法が見つかるとそればかり使ってしまいがちですが、いろいろな方法があると知っているだけでも役に立つことでしょう。
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ストレスの対処法もさまざま。中には一時しのぎにすぎないものもあるので、根本的な解決を考えるならやはりコツコツと解決をはかっていきたいものです。そんなときは、いきなり大きな解決をはかろうとするのではなく、タスクを小さく分けて少しずつ確実に進めていくと自己効力感、つまり「自分はこれを成し遂げるだけの能力がある人間だ」という感覚を得やすくなります。適度なストレスは成長やスキルアップといった良い効果があることも知られていますから、そうした視点で考えてみるのも良いかもしれませんね。
監修:赤木麻里
フリーライター。学習院大学文学部日本語日本文学科、東京福祉大学心理学部卒。
書籍やウェブサイトを中心に幅広く執筆を行う中で、特に思想、哲学、心理学の分野で多数の執筆協力、コンテンツ提供を行っている。