- テレワークとリアルのハイブリッドで、より働く環境を向上させていく
- 将来的な採用計画を視野に入れてオフィス移転を実施した
- 新本社ビルの建て替え計画を機に新たな働き方を導入した
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
2021年掲載の先進オフィス事例から
2021年も新型コロナウィルスの収束はならず、テレワークの導入やリモート会議を採用し、それを契機にオフィススペースの見直しを行う企業は少なくなかった。一方で、コロナ禍であってもワーカーの働きやすさやコミュニケーションの活性化を目的に拡張移転を行う企業も多く存在した。ここでは2021年に紹介した「先進オフィス事例」を再編集し、コロナ発生後にオフィス移転を行った企業のオフィス戦略を振り返ってみる。
はやわかりメモ
テレワークとリアルのハイブリッドで、より働く環境を向上させていく
人事採用や企業の組織改革などのコンサルティング業務で急成長を続けている株式会社Legaseed。同社は新型コロナ感染対策として2020年3月末に全面テレワーク体制に移行したが、その後、コミュニケーションの低下に課題を感じて、同年9月にオフィス移転を実施。新オフィスは、将来的な採用計画を考えて大幅に面積拡大を行った。オフィスコンセプトは「都会のオフィス」。まるでアミューズメントパークのようなオフィスを完成させた。
徹底的につくり込んだオフィスは来訪者に驚きを与え、その効果は人事採用面でも効果を発揮しているという。同社はコロナが収束したとしてもオフィスとテレワークとのハイブリッド環境を継続させながら、働く環境の向上に努めていくという。(移転時期:2020年9月)
東京システムハウス株式会社は、独立系のシステムハウスとして1976年に設立。以来、独自のさまざまなサービスや技術を通じて顧客の信頼を獲得してきた。旧オフィスは、業務拡張ごとにフロアを増床。その結果、6フロアでの使用となっていた。フロアごとに事業部を分けたことで、業務効率や社内コミュニケーションが大きく低下。それら課題解決のために、少数フロアへの集約が求められた。移転先の確保後、部署横断のプロジェクトチームを発足。オフィス構築の打ち合わせを重ねていく。
そしてコロナ禍ということもあってテレワークの本格的な導入に舵を切った。新たにABWを採用してフロア内にさまざまな働く環境を整備。ハイブリッドでの働き方はコロナ収束後も変わらず継続していくという。(移転時期:2020年9月)
長年にわたって蓄積してきた印刷テクノロジーを基盤に業務を拡大してきた凸版印刷株式会社。新たな働き方改革を目的に2020年11月に新オフィスを開設した。新オフィスはコロナ禍での設計ということもあり、感染予防対策を意識した新たな働き方の実現がテーマだったという。新オフィスのコンセプトは「直接会って対話する価値」。全フロアの4分の1にあたるスペースをコワーキングエリアとして構築。フロア全体に新たな機能を設けた。
完全フリーアドレスでABWを導入しているため、ワーカーは最適な働く場を求めて上下階を自由に行き来する。今後は、ワーカーからの要望や改善点を分析し、さらに働きやすい環境を提供していくという。(移転時期:2020年10月)
「社会貢献×フードロス」を実現する社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」を運営する株式会社クラダシ。設立以来、フードロス削減に焦点をあてたサービスで業績を伸ばしている。そんな同社がオフィス移転を実施したのは2020年11月。増員を含めたスペース計画が目的だった。新オフィスは、大幅に拡張し、新たにABWを導入した。エントランスはショーウインドウの機能を持たせた商品棚を設置。
その他、カウンター席や集中ブース、ソファ席など、自席以外で働ける場を用意した。コロナ感染予防を意識したテレワーク導入も議論されたが、同社が優先したのはリアルなコミュニケーション。ソーシャルディスタンスを保ちながら、オフィスでの業務をルール化している。(移転時期:2020年11月)
世界155ヵ国におよぶグローバルネットワークで高品質の監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しているPwC。それらの日本におけるメンバーファームの総称がPwC Japanグループとなる。同法人の移転計画は約2年にわたる大規模なものであった。過去にさまざまなコンセプトのオフィス構築を行ってきた同社であるが、今回のプロジェクトで新たに目指したのは「ワークプレイスからワークシステムへの変換」だったという。
デザインコンセプトは「共創」とし、「スポーツ」「アート」「アカデミック」とフロアごとに異なる機能を持たせ、今まで以上の社内交流を促進させる。今後も進化のスパイラルを繰り返しながら、オフィスづくりを行っていくという。(移転時期:2021年2月)
企業の健康管理を容易にし、効率的に健康情報を可視化するクラウドサービス「Carely(ケアリィ)」の開発・提供を行っている株式会社iCARE。旧オフィスの課題は、偶発的な出会いで生まれたアイデアをワンランク上のステージで進化させるための場所がなかったこと。そこでコロナ禍ではあったが、オフィス移転を最優先課題にした。新オフィスは今後の増員計画も視野に入れて約2.5倍の面積に拡張している。
新オフィスのコンセプトは「見える・聞こえる・会える」。他人の会話を近くで見聞きし、リアルに顔を合わせることを促進する。そのためソファエリアやカフェバー、中央カウンターなど、多彩な機能を備えた。移転後は、リアルに顔を合わせる機会が増え、社内コミュニケーションが高まっているという。(移転時期:2020年10月)
将来的な採用計画を視野に入れてオフィス移転を実施した
不動産売買事業で業績を伸ばしている株式会社リライズ。将来的な人材の拡充を視野に入れて2021年2月に大規模なオフィス移転を実施した。オフィス移転による一番の目的は「働きやすい環境づくり」と「採用効果」。今後の増員を想定して、旧オフィスよりも2.5倍以上となるオフィス面積を確保した。スペースを有効に使うために「執務室エリア」「応接エリア」と大きくゾーンを2つに分け、会議室を4室に増室。
加えてカンファレンスルームをオフィス内に設置し、説明会や勉強会といった多岐にわたる用途を持つ空間を備えた。エリアを代表するランドマークビルへの入居ということもあり、企業ブランディングの向上といった二次的なプラスの効果も表れているという。(移転時期:2021年2月)
看護業界のイメージを大きく変化させ、採用活動の強化につなげるために印象に残るオフィスの構築を目指した。新オフィス移転後は、驚くべきことに面接者の内定率が90%近くにまで上がっているという。そして今後も対面でのメリットを重視し、人と人とのつながりを意識したオフィスを維持していく考えだ。(移転時期:2021年3月)
新オフィス最大の特長はパブリックスペースの広さ。全スペースの約7割を充て、どこでも働ける環境を整備した。その結果、想像以上に部署の壁を超えた交流が増えているという。(移転時期:2021年6月)
新本社ビルの建て替え計画を機に新たな働き方を導入した
日本を代表する総合商社丸紅株式会社。1972年竣工の16階建の建物を本社ビルとして使用していた。しかし将来的なBCPを考えて建て替え計画がスタート。2021年2月に新社屋が竣工する。地下2階地上22階建の大規模複合ビルで、低層階は飲食施設や大ホール、貸会議室として地域に開放、5階以上を同社のフロアとした。5階は応接・会議室の専用フロア、7階は多目的な利用を想定した社員食堂となっている。
8階以上が執務室で、オフィスコンセプトは「Chain(つながり)」。各フロアに、組織の一体感を構築する「Circle(サークル)」、作戦会議の場となる「Huddle(ハドル)」、新たな発想の創出を目的とする「Round(ラウンド)」を配し、部署を横断したコミュニケーションを促進する。(移転時期:2021年5月)