2023年の先進オフィス事例を振り返る

2023年1月~12月掲載

バックナンバーを一括ダウンロード

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

2023年掲載の先進オフィス事例から

2023年の「先進オフィス事例」掲載企業は12件。それらを大きく①コミュニケーションの向上を目的とした事例、②働き方の改善を目的とした事例、③採用計画の強化を目的とした事例、の3つのブロックに分けてまとめてみた。

はやわかりメモ
  1. コミュニケーションの活性化が事業成長につながると考えた
  2. 立地や働く環境を変えることで今までにない価値を創造した
  3. オフィス移転の目的の一つに採用強化を大きく打ち出した

コミュニケーションの活性化が事業成長につながると考えた

データを活用して企業の経営改善を支援している株式会社ブレインパッド。さらなる事業成長と多様化する働き方に対応するために本社移転を実施。これまでの2拠点・4フロアから2フロアに集約し、快適な空間を構築した。フロアは、社内外の人が交差しあう空間「総合エントランス」と完全フリーアドレスを中心とした「執務スペース」で構成。執務スペース最大のスポットは中央に設けられたコラボレーションエリア「Ignition Circle」となる。カフェカウンターなど80席を用意、アイデアの着火点となる場を目指している。

株式会社ブレインパッド

株式会社ブレインパッド:Ignition Circle全景

「『共創』を促進するオフィスを構築したので、出社したときは黙々と一人で勤務時間を過ごすのではなく、誰かとコミュニケーションをとってほしいですね」
(開設時期:2022年5月)*2022年11月に取材

統合型経営プラットフォームの開発・提供を行っているfreee株式会社。コロナ禍で全社一斉リモートワークに切り替えたが、部署を横断したアイデアの創造、自由闊達な議論、従業員同士の一体感が薄れるという課題があった。そこで、オンラインの利便性を維持しつつ、コミュニケーションを活性化させる機能が必要と拡張移転を実施した。新オフィスでは、新たな交流を創出するために多様なバリエーションで空間を構築。現在、出社率は約80%超。さらに協業のスピードやクオリティを上げている。

freee株式会社

freee株式会社:フリースペース

「業務の効率化はできても、コミュニケーションの効率化はできません。対面でのちょっとした反応でイノベーションが生まれます。だからこそオフィスは必要だと考えています」
(開設時期:2022年8月)*2022年9月に取材

教育支援サービスを提供している株式会社インソース。コロナ禍で、従業員が一斉に集まることを自粛していたため、コミュニケーションの活性化や情報共有に課題が生じていた。そこで、都内の営業拠点2ヵ所の統合移転を実施。余裕のある面積を確保し、オンラインでも対面でも使用できる研修ルームをつくった。執務室内は、開放感のある空間を構築。少人数のチーム構成に変更したこともあるが、今まで以上にアイデアを出し合っている姿を目にするようになっているという。

株式会社インソース

株式会社インソース:エントランス

「コロナ禍を経験して、対面でのコミュニケーションの必要性を再認識しました。近くに相談できる誰かがいる安心感。それがオフィスで働く最大の理由だと思っています」
(移転時期:2022年8月)*2023年3月に取材

ドイツに本社を置くヨーロッパ最大級の企業向けソフトウエア会社の日本法人であるSAPジャパン株式会社。旧本社は9フロアを使用していたため、社内のコミュニケーションは決して良好ではなかった。新オフィスは1フロア面積を広くしたことでスペース効率を向上させた。また、ABWの進化系を意識して、可動式の家具・什器を採用。打合せ内容に合わせたチーム編成を容易に構築する。新オフィスで最も評価が高いのが「音環境」。心地良さ、交流、生産性向上、ホワイトノイズといった役割を果たしている。

SAPジャパン株式会社

SAPジャパン株式会社:コラボレーションエリア

「全従業員がリアルな『出会い』を共有することで、会話が生まれ、アイデアの創造を可能にします。それが生産性の向上に繋がるのだと思っています」
(移転時期:2022年9月)*2023年1月に取材

立地や働く環境を変えることで今までにない価値を創造した

Trip.com Group

Trip.com Group:イベントスペース

世界最大級のオンライン旅行会社Trip.com Group。業務の拡張による会議室不足が課題になっていた。最適な働き方を模索する中で、社食、フォンブース、カンファレンス、会員制レストランなどの多様な施設を有するオフィスビルへの入居を決めた。ビルグレードは大幅に上がったが、ビル内の施設をフル活用することで約30%の面積削減に成功。それにも関わらずランニングコストはさほど変わっていないという。新オフィスにも、イベントスペースや多様な会議室、ファミレスブース、カウンター席などを用意している。

「オフィスには色々なスタイルがあっていいと思います。各社の価値観の違いだけです。当社は、仕事のクオリティをあげるためのオプションの一つだと気楽に考えています」
(移転時期:2022年11月)*2022年12月に取材

株式会社GSIクレオス

株式会社GSIクレオス:Big Table

繊維と工業製品の両分野を軸に多様な事業展開をしている株式会社GSIクレオス。コロナ禍で導入した在宅勤務が「働く環境」を見直すきっかけとなり移転を実施した。本社ビルは旧耐震で従業員の安全性の確保、業務効率の悪さ、コミュニケーション不足などの課題解決が求められていた。オフィスコンセプトは「Connecting」。レイアウトコンセプトは「Open communication with fun」。開放的な執務室を構築している。また、管理部門と営業部門の接合点に「Big Table」を配置。部署を超えたコラボレーションを促進する。

「生活する上で人と人との交わりは重要です。それは社内でも変わりません。誰かに会える場所。それがオフィスの役割だと思っています」
(移転時期:2023年1月)*2023年4月に取材

仮想空間のプラットフォームの構築を中心に事業展開してきた株式会社ambr。今回のオフィス移転には、「手狭感」「打ち合わせスペース不足」に加えて、働く場の再考という目的があったという。新オフィスのコンセプトは企業ビジョンと重ね「Playground」に。エントランス左側の大空間には、会議室やVR検証エリア、ミーティングエリアで構成。執務エリアには、コーヒーカウンターやコミュニケーションエリア、卓球台を配置。新たな交流を創出させ、採用にも影響を与えるスペースづくりを行っている。

株式会社ambr

株式会社ambr:会議室からPlay Area

「当社のビジョン実現のためには、従業員がいつでも集まれる場の確保が不可欠でした。そのためには費用をかけてでも絶対にオフィスは必要だったのです」
(移転時期:2023年1月)*2023年6月に取材

BtoBマーケティングのアドバイザリーサービスを主軸に事業展開をしているマーケットワン・ジャパン合同会社。まん延防止等重点措置の解除にあたりハイブリッド型の働き方に。働く環境の整備は絶対的に必要だが、「どこで仕事をするか」も重要な要素と考え、オフィス移転を決意する。新オフィスのコンセプトは「出社したくなる、家よりも仕事がしやすい」。バーカウンター、ホワイトボードエリア、ソファエリア、スタンディング、ファミレス風ブース、Web会議用ブース、プレイルームなど多くのバリエーションを用意した。

マーケットワン・ジャパン合同会社

マーケットワン・ジャパン合同会社:ホワイトボードエリア

「対面でしかわからないことは日常生活の中に見え隠れしています。そこに価値創造のヒントがあると考えます。それを維持・向上させるために『人との交わり』が必要なのです」
(移転時期:2022年11月)*2023年3月に取材

株式会社HBA

株式会社HBA:ABW全景

ソフトウエア開発をメイン業務としてITソリューションを提供している株式会社HBA。入居ビルの老朽化、手狭感、感染症対策、コミュニケーション不足の解決のためにはオフィス移転が必須だった。そして「コラボレーションができるオフィス」をコンセプトにオフィス構築を行った。新オフィス最大の特長は、フロアの四分の一以上の面積を持つABWエリア。いくつもの機能を配置し、多様な用途に応じた環境を提供している。オンラインでは生まれにくい「人との繋がり」にこだわったオフィスとなった。

「対面での会話を楽しめる場をつくることで、従業員のエンゲージメントが高められると考えました。そのためには各種各様なコラボレーションが重要だと思っています」
(移転時期:2023年3月)*2023年5月に取材

株式会社エンファクトリー

株式会社エンファクトリー:テーブルエリア

ECサイトを中心にマーケティングやマッチングサービスを展開している株式会社エンファクトリー。働く環境の向上を目的にオフィス移転を行った。新オフィスのコンセプトは「Play Adventure」。入口を抜けると会議室が2室。扉奥のセキュリティエリア内にソファやテーブル、バランスボールを置いたコミュニケーションエリアが広がる。壁一面には本棚、オフィス中央には大樹を置いた大テーブルを配置している。その他、ハイカウンターテーブル、Web会議用ブースなどで構成。自由な働き方を象徴するオフィスを構築した。

「コミュニケーションは対面の方が取りやすいですし、議論するときも言葉や表情があるからわかりあえると思っています。新オフィスはそんなシーンを考えてつくりました」
(移転時期:2023年4月)*2023年7月に取材

オフィス移転の目的の一つに採用強化を大きく打ち出した

香りの総合プラットフォーム「カラリア」を運営している株式会社ハイリンク。より専門性の高い人材の採用、活発なコミュニケーションの促進などが求められていた。そのために考え抜いたオフィス戦略を立案した。新オフィスのコンセプトは「個と組織の居場所をつくる」。その思いを具現化するために、家具ではなくソファやクッションだけを並べた会議室、約1,000種類の香水を並べた棚、集中ブース、スタンディング、卓球台、ボードゲームなど、多様な機能を揃えた。そして用途に応じて働く場を選べるようにしている。

株式会社ハイリンク

株式会社ハイリンク:フリースペース全景

「対面という最も伝わりやすい方法での意見交換。その安心感を守るための防波堤となっているのがオフィスではないかと思っています」
(移転時期:2023年1月)*2023年2月に取材

中小企業を対象に、バックオフィス業務のアウトソーシングサービスを提供しているキャシュモグループ。企業ブランドを高めて、採用計画を強化したい。そんな強い思いでオフィス移転を実施した。新オフィスのコンセプトは「スピード感」と「健康」。当社のミッションを、そのまま空間づくりに盛り込んだ。会議室のほか、スタンディング、ソファ、ファミレス風ブース、Web会議用ブースなど、多様な機能を用意した。また従業員の健康維持を考え、フィットネスジムを新設。採用や営業活動のツールとして機能している。

キャシュモグループ

キャシュモグループ:オフィス全景

「従業員にとって働きたくなる場所は絶対に必要です。それで新オフィスには色々なバリエーションを設けました。それが従業員のストレス発散や安心感につながればいいですね」
(移転時期:2023年7月)*2023年9月に取材