- より高いサービスを創出するため、時代にふさわしい新拠点をオープンさせた
- 自社ビルから賃貸オフィスビルへ。建物の老朽化におけるBCP対策で移転
- 立地改善によるメリットを考えてオフィス移転を行った事例
- コロナ禍で働き方を再検討。スペース効率を考えた移転を行った
- 働きやすい環境を求めて使用面積の拡張を行った
- 大規模リノベーションと感染症対策としてのオフィス戦略
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
2022年掲載の先進オフィス事例から
2022年も新型コロナウイルスは収束せず、多くの企業にとってはその状況を見ながらオフィス運営を行った一年となった。取材企業の特長は、各社ともに、「コミュニケーションの活性化」を掲げていること。その解決のために多目的スペースの新設という施策を講じている。ここでは2022年掲載の先進オフィス事例の掲載記事を再度見直し、各社のオフィス戦略やオフィスに対する思いをまとめてみた。
はやわかりメモ
より高いサービスを創出するため、時代にふさわしい新拠点をオープンさせた
大手総合化学メーカーの旭化成株式会社は、創業100周年を迎えるにあたり、新中長期経営計画としてDX推進の強化を掲げた。そして、より高い価値の創出のためには社内外のナレッジの共有が欠かせないと考え、JR田町駅近くの大規模オフィスビルに「デジタル共創ラボ CoCo-CAFE」を開設した。新オフィスは、エントランスエリアと執務エリアで構成。エントランスエリアには「各種会議室」「多目的ゾーン」。執務室は「Agile(実証実験)」「Communication(交流)」「Concentration(集中)」「Living(リフレッシュ)」のゾーンで形成している。
「コロナ禍で、在宅勤務に合わせて会社のルールも変更しました。面白いことにDXを推進する従業員の大半が、対面でのコミュニケーションの重要性を理解しています」
(開設時期:2021年1月)*2022年5月に取材
フジフーズ株式会社は、年間550種類もの加工食品を製造・開発。セブン‐イレブン・ジャパンに豊富な商品を提供している。コロナ禍で都心のオフィスビルに空室が出始めることをチャンスと捉え、千葉市の本社機能を東京・日本橋へ移した。移転により、取引先の方々への移動をスムーズにし、今後、各事案の意思決定までのスピードの向上を目指すという。新オフィスでは初めての試みとなるフリーアドレスを採用。その他に、広々とした多目的エリアやライブキッチンを新設。従業員の働きやすさを追求した。移転によって人材採用の応募者数が大幅に増加したのも移転効果の一つだという。
「新オフィスには『リフレッシュ』『健康』をキーワードにした機能を設けています。それが従業員の心身の健康に生かされ、結果として人に優しい会社になることを目指します」
(開設時期:2021年12月)*2022年5月に取材
自社ビルから賃貸オフィスビルへ。建物の老朽化におけるBCP対策で移転
アンテナ、コネクタ、先端デバイスといった製品群の生産を中心に事業を拡張してきた株式会社ヨコオ。東京都北区の自社ビルに本社を構えていた同社であるが、以前から「多様な働き方」「人材採用」が大きな課題に。同時に、築30年が経過した自社ビルでの災害対策が議論になっていた。それらの表面化した経営課題の改善を目的に、複数路線が利用できる千代田区・神田須田町への本社移転を行った。新オフィスのデザインコンセプトは「気持ち良くいられる環境」。フリーアドレスエリアを新設し、各所に多様なエリアを備えることで、従業員のモチベーションを上げる工夫をしている。
「テレワークでは連絡や報告が中心になってしまいます。それをコミュニケーションといえるのかどうか。リアルの場が全くない中でのデジタルは成立しないと思っています」
(移転時期:2021年10月)*2021年11月に取材
創業から一貫して自然災害の一つである「雷」と向き合ってきた株式会社サンコーシヤ。今後の事業展開や働き方の見直しといった理由のほか、ビル設備の老朽化も課題であった。「建替」と「移転」との2択となったが、慣れ親しんだ品川区大崎で希望条件にマッチしたビルに出会い、移転を決意した。移転を機に新たな働き方を採用。フリーアドレスを導入することで使用面積を大幅に削減した。オフィスコンセプトは「フリーアドレスのある風景」。ペーパレスなど、DXも推し進めた。中央部分にはフリーアドレスエリアを新設。新たなコミュニケーションの向上を促進するためのスペースとなっている。
「面積に関わらずオフィスは絶対に必要だと思います。フリーアドレス席に座っているだけで色々な情報が入ってきます。それはテレワークだけでは絶対に知りえない情報です」
(移転時期:2022年3月)*2022年5月に取材
立地改善によるメリットを考えてオフィス移転を行った事例
ビジネスマッチングサービスを主業務として堅実に業績を伸ばしているフロンティア株式会社。豊島区池袋で創業後、同エリア内で移転を行ってきた。移転直前は3フロアに分散しており、「コミュニケーションの低下」「商談スペースやリモート会議専用スペースの不足」などの課題を抱えていた。そんな中、新型コロナウイルスの発生が、新規ユーザーの獲得につながる。今後の人員計画を視野に入れ、思い切った本社移転を決断する。最終的には、採用ターゲット層を考えて渋谷区恵比寿を代表するランドマークへ入居。新オフィスは、効果的なフリーアドレスエリア、窓際に多目的スペースを配置。創造性を向上させる機能を備えた。
「全員が『共有』し『共感』できる場が必要です。それがオフィスだと思っています」
(移転時期:2021年9月)*2022年1月に取材
「リアルなコミュニケーションの必要性を実感しています。リモートによって可能な業務も増えましたが、よりクリエイティブなアイデアを生むには、顔を合わせての会話が重要だと思います」
(移転時期:2021年12月)*2022年4月に取材
「単に新たな機能を構築するだけではコミュニケーションは活発になりません。オンラインではできないイベントや交流会の開催にも取り組んでいきます」
(移転時期:2022年5月)*2022年7月に取材
コロナ禍で働き方を再検討。スペース効率を考えた移転を行った
食を通じて企業の福利厚生サービスをサポートしてきた株式会社OKAN。現在は、組織課題解決サービス「ハタラクカルテ」をリリースし、従業員の定着を目的としたサービスを開始している。豊島区池袋の旧本社には大規模なイベントを目的にオープンスペースを用意していたが、コロナの影響で開催が困難に。オープンスペースの必要意義を再考するきっかけとなり、同エリア内で約50%を縮小したオフィス移転を実施した。新オフィスのコンセプトは「家」。多様な機能を設けながら、従業員同士の自然な交流を促している。
「決められた時間で、あらかじめ参加者が決まっている中での打合せ。それよりも当社は偶発的な出会いで創出されるアイデアや発想を求めています。そのためには誰もが集まれるリアルな空間は必要だと考えています」(移転時期:2022年3月)*2022年4月に取材
日本のモバイルインターネットサービスを牽引してきたグリー株式会社。経営課題としてファシリティコストの削減が求められており「コスト構造の改革」を目指してオフィス移転を行った。移転後は、旧オフィスと同じ六本木内の大規模オフィスビル6フロア、約3,000坪に入居。打合せや面談がオンラインに移行しつつある現状を踏まえ、派手なエントランスやスペースを徹底的に廃止し「従業員のためのオフィス」をつくった。そして同社としては初めての試みとなる全社フリーアドレスを採用。その分の面積を従業員のためのスペースに割り当てている。
「複数の人が集まることでコミュニケーションが生まれ、信頼関係が醸成します。そうした環境づくりや仕組みがオフィスの役割になってくると思っています」
(移転時期:2022年3月)*2022年5月に取材
スマートフォンを中心にモバイルゲームを提供している株式会社コロプラ。新型コロナウイルスの発生時から在宅勤務制度を採用。社員の健康を維持し、感染症対策の推進に舵をきった。出社率は3割を想定している。新オフィスで重視したのは「感染症対策」と「コミュニケーションの活性化」。感染症対策では、排気ダストの追加工事を行い、排気量を20%も増強した。コミュニケーションの活性化では、従業員が気軽に集まれる「コロパーク」を新設。福利厚生施設を含めた多くの働きやすい空間づくりを行っている。
「どんなに優秀な技術者でも一人で100点満点の商品をつくるのはとても困難です。そのためには色々な意見やアドバイスが必要です。今後、IT技術が発達したとしても、当社からリアルなコミュニケーションが無くなることはありません」
(リニューアル時期:2022年2月)*2022年6月に取材
働きやすい環境を求めて使用面積の拡張を行った
東京海上グループの保険業務をサポートしている株式会社東京海上日動コミュニケーションズ。オフィスの拡張を検討していた中、入居ビルの別フロアに1,000坪の空室が出る情報を入手。そこで近隣に分散していた事業部の集約、Withコロナを考えたオフィスの構築を理由に拡張移転を行った。新オフィスのコンセプトは「WithコロナからAfterコロナまで」。特長の一つは感染予防も視野に入れて開放的かつ斜めに机を並べた執務室。そしてコールセンターには珍しい広大な「リフレッシュエリア」をつくったことだ。
「人と人との繋がりを大切にする会社でいたいと思っています。社員が快適に過ごせるオフィスは、当社が事業を発展させていくうえで不可欠な環境です。今回のプロジェクトではDXとCXを活用した新時代のオフィスを構築できました」
(移転時期:2021年8月)*2022年9月に取材
「リモートワークを促進してきましたが、オフィスだからこそコミュニケーションやアイデアが生まれていることも実感しています。オフィスで業務を行う利点と、リモートでの利点はそれぞれ異なります。それぞれの利点を組み合わせて業務を推進していきたいです」
(移転時期:2022年3月)*2022年7月に取材
「オフィスは『働くモード』に切り替えるための場所。だからこそオフィスは必要で、快適性にこだわっていきたいのです」
(移転時期:2022年3月)*2022年5月に取材
「結束を深めるためには、対面でなければ実現は難しいと考えました。直接、人の声を聞く。それこそがオフィス存在の大きな意義だと思っています」
(移転時期:2022年4月)*2022年5月に取材
「在宅勤務とオフィス勤務を併用し、集中して作業を行いたいときはオフィスに来るようにしています。その方がオンオフの切り替えがしやすいからです」
「オフィスは仕事をする場所。そこが快適かどうかは生産性や業務効率に影響を与えます」
(移転時期:2022年5月)*2022年9月に取材
「出社したいときに出社できる。そんな環境に整えていかなければと思っています。そして常に要望を聞きながら働きやすいオフィスを提供していきます」
(移転時期:2022年7月)*2022年8月に取材
大規模リノベーションと感染症対策としてのオフィス戦略
教育、介護・保育、生活といったライフステージを中心とした分野で教育や出版などの事業を展開している株式会社ベネッセコーポレーション。自社ビルの竣工から27年を経過する中、BCPや働く環境の観点から、オフィスのリノベーションが求められていた。2020年7月に、ワークスタイル変革プロジェクトが発足。ベネッセらしい働き方の追求が進められた。オフィスコンセプトは「チームでの共創を生み出し、お客様と社員の『よく生きる』を実現する」。全21フロアで構成するビル内には、コミュニケーションの形に合わせてフレキシブルに選択できる多様なチームビルドスペースを配置している。
「顔を合わせることで初めてアイデアが生まれることもあります。当社にとって価値を創造するための場であるオフィスは、今後も必要だと認識しています」
(リニューアル時期:2021年5月)*2022年5月に取材